2020年は、コロナ禍により先行きが不透明な社会情勢と経済環境下での企業活動を強いられる一年となった。2021年も引き続きコロナ禍との共存を見据え、“テックネイティブ”な姿勢でデジタル技術を活用することが、一層重要となろう。ITRでは、企業が注目すべきIT戦略テーマと将来予測を「ITR注目トレンド2021」として取りまとめて発行した。本稿では、そこであげた戦略テーマを解説し、企業に求められるIT戦略の指針を示す。
再認識されたテクノロジ活用の重要性
2020年は初頭より世界的に猛威を振るうコロナ禍によって、多くの企業が先行きの不透明な社会情勢と経済動向に翻弄させられる年となった。いまだ確実な収束の目途はたっておらず、企業は、引き続き不確実性の高い市場経済に対峙するとともに、中長期のコロナ禍との共存を前提としたレジリエンス(復元力)重視の経営を要求されることとなろう。しかし、いつの時代もそうであるように、厳しい環境下においても業績を維持・向上させて市場で存在感を発揮する企業は存在する。それらの企業がいかなる条件を備え、どのようなビジョンを志向しているかを把握しておくことは有益である。
コロナ禍の初期段階では、Web会議を中心としたテレワーク環境の構築が多くの企業で喫緊の課題となったが、IT部門担当者の尽力によって、すでにあるいは早期に環境構築を実現した企業は、大難を小難に抑えて事業を継続することができた(ITR Review 2020年8月号「コロナ禍から学ぶIT部門の組織戦略とは」#R-220083)。また、コロナ対策が中長期的な課題として認識され始めた2020年夏に行った調査では、一部の企業はデジタル投資によって収益減退の影響を緩和する傾向が見られた(ITR Insight 2021年冬号掲載予定「ニューノーマルを見据えたデジタルビジネス戦略」#I-321011)。コロナ禍は、企業にテクノロジ活用を促すと同時に、企業活動におけるテクノロジ活用の重要性を改めて認識する機会をもたらしたといえるだろう。
外部環境に目を向けても、テクノロジ活用の重要性が増す傾向が見て取れる。例えば、コロナ禍における株式の優良銘柄として、医療・健康関連、巣ごもり消費関連に加えてデジタル・5G関連があげられる(ITR Review 2020年12月号「アフター/ウィズコロナの経済情勢」#R-220122)。他にも先進テクノロジへコミットメントの高い企業の株価の上昇例は数多い。企業は、自社のビジネスを有利に展開するだけではなく、資本市場や取引先からどう評価されるかという点も、その目的に織り込んでDXを捉え直すべきであろう。総じて、デジタル技術/データを駆使した業務改革やビジネス革新の推進は、これまでにも増して重視すべきIT戦略になると見てよい。