2019年6月1日、システムで管理された無人自動運転の車両が逆走する重大な事故が発生した。年々システム障害の発生件数が増加傾向にあるなか、逆走は想定外であったこの事故を対岸の火事と捉えるべきではない。本稿では、システム障害の想定視点と重視すべきポイントについて論じ、想定外をなくすこと、および想定漏れと捉える意識改革の重要性について考察する。
増加傾向にあるシステム障害
2019年6月1日、横浜シーサイドラインが運行するシーサイドラインの新杉田駅で、無人自動運転中の車両が逆走し、車止めに衝突した事故が起きた。同社は逆走したことは想定外であったとし、考慮していなかったことを認めた。人命に関わる重大な事故であるため、詳細な事故原因の調査と再発防止に取り組むことになると思われるが、企業はこの事故を対岸の火事と捉えるべきではない。
これまでITRではシステム障害が発生した際の組織的な対応方法や(ITR Review 2016年5月号「システム障害対策本部の設置」#R-216052)、システム障害の発生確率を低減する措置について解説してきた(同2016年6月号「システム障害記録の活用」#R-216064)。今回は、システム障害の想定視点と重視すべきポイントについて論じ、想定外をなくすこと、および想定漏れと捉える意識改革の重要性について考察する。
出典:IPA(情報処理推進機構)のデータを基にITRが作成
まずシステム障害の増減傾向については、IPA(情報処理推進機構)が情報システムの障害情報を公開している。これは、全国紙などに報道された件数であり、過去10年間は図1のとおり増加傾向にある。システム二重化や作業ミス撲滅などの対策が進んでいるにも関わらず、システム障害は年々増加傾向にあり、憂慮に堪えない事態となっている。