世界中の企業が導入してきたERPパッケージであるが、ここにきて大きな変化を迎えつつある。主要ベンダーは、従来型のオンプレミスだけでは高い成長性を維持することが困難となり、新たな成長の糧としてクラウドのサービス拡充に力を入れてきている。しかし、従来型のビジネスモデルを変革しながら、高い成長性を獲得するのは容易ではなく、ベンダーの勢力図が大きく変わる可能性もある。
登場して20年を越えたERPパッケージ
1999年代前半に主流となり始めたテクノロジが、20年に一度の大転換期に直面している(ITR Review 2014年12月号「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ」#R-214121)。これは1994、5年頃から国内で導入が本格化したERPパッケージにそのまま当てはまる。ITRが毎年実施しているIT投資動向調査でもその傾向は顕著であり、直近3年間では、翌年に向けてERPへの投資額を増やす企業の裾野は減少を続け、最新の「IT投資動向調査2015」ではついにマイナスに転じた(図1)。
出典:IT投資動向調査2015
図1では、ERP以外の業務アプリケーションもマイナス象限に位置するものが多いが、これらのなかには、企業の業種によっては比較的投資意欲が高いものもある。しかし、ERPパッケージは、翌年度に向けた投資額を「減少(20%未満)」「大幅に減少(20%以上)」するとした回答を合算した割合が、「大幅に増加(20%以上)」「増加(20%未満)」するとの合算値より高い業種が目立つ。製造業と情報通信の2業種だけは、増加と減少が同じ割合であったものの、他の業種ではおしなべて減少する割合が上回る。また、企業規模別では、大企業のみがわずかながら増加が減少を上回るものの、中堅企業、中小企業では減少するとの回答割合が高い。国内ERP市場規模は、2008年度から2009年度を境に、中堅企業向け市場が大企業向けを上回っているが(ITR Insight 2014年春号「エンタープライズ・アプリケーション再生」 #I-314042)、IT投資の最新動向がもしそのまま国内ERP市場に反映するとすれば、売上げが前年を割るようなことも懸念される。ERPパッケージのビジネスは、明らかに衰退に向かっているように見える。