自動運転に関わるテクノロジは、多岐に及んでおり、アフターコロナでは急速に技術開発が進展すると見られる。本稿では、自動運転を実現するテクノロジを整理し、主要プロバイダーの取り組みを紹介することで、自動運転ソリューションの市場構図を明らかにすると同時にその動向を述べる。
大変革をもたらす自動運転テクノロジ
昨今の自動車産業のテクノロジやビジネスに関わるさまざまな変革は、100年に一度の大変革と称されるライドシェアやEV(電気自動車)が普及し、自動車産業のメガトレンドである「CASE」は、現在着実に市場に浸透している(ITR Review 2019年2月号「Mobility as a Serviceの動向」#R-219021 )。なかでも、市場の期待が大きく寄せられているのが「自動運転」である。現在は、宅配ニーズが増した物流分野を除き、世界的にも自動運転の開発は停滞しているが、アフターコロナでは一気に再燃する可能性があり、注視が求められる。
自動運転は、日産自動車のテレビCMに高速道路の自動走行シーンが使われたり、カリフォルニアや深圳での自動運転車がメディアで紹介されたりしたことで、最近は一般消費者にも馴染みのあるものとなってきた。しかし、自動運転の実現には、広範に及ぶ技術開発をはじめ、社会基盤の構築や法整備、保険など関連業界での対応が求められ、その道のりは長く険しい。日本政府が採用する米国のSAE Internationalが策定した自動運転の定義によれば、次のステップは、現在、技術プロバイダー各社が見据えるのは完全自動運転だ。特定の場所に限りシステムが全てを操作するが、緊急時はドライバーが操作することのできる状態(レベル3)である。一方、特定の場所に限るが、緊急時も含めて完全にシステムが制御してドライバーレスとなるレベル4や、全ての場所で完全に自動運転となるレベル5が実現すれば、モビリティのあり方が大きく変わり、クルマの概念も「情報端末としての移動体」にシフトすることとなろう。なお、SAE Internationalは世界に9万人超の会員を擁する標準化団体で、Automotiveという言葉の生みの親でもある。
自動運転の構成要素は極めて複雑かつ多岐に及ぶため、テクノロジを分類・体系化して把握することが重要である。本稿では、車両(車体およびコアモジュール)、システム(IT、ソフトウェア、データ)、デバイス(半導体デバイス、センサーなど)、インフォテインメント系(娯楽、広告など)の4領域に分類する(図1 )。続いて、各市場の動向を順に見てみよう。
出典:ITR