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  3. サーバレスの価値と活用アプローチ(後編) - サーバレスのユニーク性と活用ポイント -


ITR Review

コンテンツ番号:
R-218113
発刊日:
2018年11月1日

サーバレスの価値と活用アプローチ(後編)

サーバレスのユニーク性と活用ポイント

著者名:
甲元 宏明
サーバレスの価値と活用アプローチ(後編)のロゴ画像

サーバレスは長所も多く、クラウドネイティブを実現するための強力な手法である。しかし、従来の手法との違いも多く、採用は容易とはいえない。IT部門は、テストアプリケーションの試験的構築などで、サーバレスの長所、内容そしてユニーク性の検証をしたうえで、自社クラウド戦略を策定すべきである。

サーバレスのユニーク性

ITR Review 2018年10月号「サーバレスの価値と活用アプローチ(前編)」(#R-218101)においてサーバレスの長所を解説したが、他のクラウド・コンピューティング手法と何が違うのであろうか。図1に相違点を示した。

図1.サーバレスと他の手法の相違点

図1.サーバレスと他の手法の相違点
出典:ITR

IaaSは、従来手法(オンプレミスサーバ上のシステム開発)とは異なり、ネットワーク、ストレージ、サーバ環境(ハードウェアまたは仮想マシン)をユーザー企業が自ら準備/運用/保守を行う必要がなくサービスとして利用すればよいが、サーバOS、ミドルウェア、アプリケーション稼働用ランタイム、データ、アプリケーションについては自社で準備/運用/保守を行う必要がある。DockerやKubernetesといったコンテナをサービスとして提供するCaaS(Container as a Service)も多くのクラウド事業者が提供しているが、CaaSはIaaS上でユーザー企業が準備/運用/保守を行うレイヤーをコンテナ化し自動的にデプロイする手法であり、IaaSにおいてユーザー企業が責任をもって管理すべきレイヤーと同一である。

PaaSの定義はさまざまであり、DaaS(Database as a Service)やシステム連携ツール・サービスなど、さまざまなサービスをPaaSと分類することも多い。本稿では「アプリケーション開発/保守/運用環境のサービス提供」としてのPaaSに限定して議論を進める。PaaSではアプリケーションとデータをユーザー企業が管理し、それより下のレイヤーに関してはサービスを利用するだけでよい。PaaSは従来のアプリケーション構造(Webアプリケーションなど)のままで、従来のプログラミング手法で開発することが可能である。従来手法では、ユーザー企業が管理しなければならなかったサーバハードウェア/仮想サーバ、ミドルウェア、ランタイムをサービスとして利用することができる。

PaaSとサーバレスの違いはわかりにくい。「アプリケーション開発/保守/運用環境のサービス提供」というPaaSの定義を考慮すれば、サーバレスはPaaSの一種といえる。しかし、サーバレスは一般的なPaaSとは異なり、アプリケーションのみに集中できることが最大の特徴である。図1に示したように、PaaSではアプリケーションとデータをユーザー企業が管理する必要がある。ここでの「データの管理」とは、RDBMSやNoSQLなどのクラウドサービスを用いて、ユーザー企業がデータを管理することを意味している。サーバレスの場合はRBDMSやNoSQLなどのようなクラウドサービスを利用せず、アプリケーションを実現するプログラム・コードのみをサーバレス・サービスに記述する。そして、各アプリケーション間の連携はAPIを介して行う。サーバレスはこのような仕組みであることから、アプリケーションのみに集中することができる。

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