SAP社は、すでに多くの有力製品が存在するCRM分野に、C/4HANAを新たなクラウドソリューションとして発表した。C/4HANAがどのような特徴を持つかについて、システム構成レベルで概説するとともに、短期間での出荷を可能としたシステム統合方式について述べる。C/4HANAを検討する企業は参考とされたい。
SAP社の新たな顧客フロントオフィスソリューション
2018年7月25日、SAPジャパンは、従来のSAP CRM、SAP Hybrisから構成される顧客接点のシステムを新たに刷新したスイート製品であるSAP C/4HANA(以下、C/4HANA)を発表した。この発表と同時に、C/4HANAの国内出荷も正式に開始され、SAP CRMならびにSAP Hybrisの新規販売は基本的に終わりを迎えることとなる。国内での正式発表に先立ち、C/4HANAは、2018年6月5日から7日まで米国オーランドで開催されたSAP社最大のイベントであるSAPPHIRE NOW 2018の初日、第4世代のカスタマーエクスペリエンス・スイートとして先行発表されていた。SAP社は、2017年9月24日にGigya社、2018年1月29日にCallidus Software社といったCRM関連ベンダーを矢継ぎ早に買収してきたが、C/4HANAの発表と同日にCoresystems社をそのなかに加えることで締めくくったかのように思える。
SAP社は、2013年6月6日にHybris社の買収を発表して以降、Eコマース、ビリング、マーケティング、セールス、サービスといったソリューションをHybrisベースで拡充し販売してきた。しかし、5年を経ずして新たに一連のベンダー/製品を補強することで、同社が顧客フロントオフィスソリューションと位置づける新製品であるC/4HANAを発表したことになる。同時に、ERPのS/4HANAをバックエンドソリューションとしてC/4HANAと一体であることも強調しており、ERP機能を提供していないCRM分野の専業ベンダーとの差別化を図っている。C/4HANAとS/4HANAを切れ目なく動作させることで、製品のマーケティングからサービスに至る全てのタッチポイントでの優良な顧客体験と、受注・製造から出荷に至るバックステージのフルフィルメントでもボトルネックのないシステムを両立できると、SAP社は強調している(ITR Insight 2015年秋号「サービスデザインによるビジネス変革へのアプローチ」 #I-315102)。