重篤なシステムトラブルが発生したり、その以前に突然プロジェクトが頓挫するようなシステム構築の失敗事例が後を絶たない。企業は、上流工程の作業内容を改めて見直すととともに、システム方式設計に関するスキルを自社で育成・強化していくことが推奨される。
減らないシステム構築の失敗事例とその共通要因
ITRは、20年以上にわたり、国内IT投資の動向、製品/ベンダーなどの市場動向、最新の技術動向などを調査してきている。また、こうしたリサーチから得られる情報を活用したコンサルティング業務も両輪として実施しており、システム化構想の策定からRFP/ベンダー選定などの支援も行っている。こうした広範なITに関する専門的なスキルと、特定のベンダーとの関係性を持たないビジネスの立ち位置から、失敗または炎上に陥ったシステム構築プロジェクトの第三者評価を多く実施してきている。それらの経験から、ほとんどの失敗プロジェクトにはいくつかの共通する要因があることが指摘できる。さらに突き詰めれば、設計・開発・テストといったシステム構築の下流工程に至る以前の上流工程、すなわち、システム化計画・要件定義・システム方式設計といった工程に原因があることが多い。
ただし、上流工程といっても、よくいわれるように、ユーザー企業側の体制やプロジェクト管理が不十分なために、業務要件が確定できない、進捗や課題の管理が不適切であるといったことが決定的な原因となったわけではない場合が多い。もちろん、炎上や頓挫に至るようなシステム構築プロジェクトの場合、業務担当者や意思決定者の参画、および構築を担当するベンダーとのコミュニケーションに何の問題もなかったということはない。特に大規模ITプロジェクトでは、プロジェクト責任者のコミットメントやリーダーシップは重要であり、企業/ベンダー間だけでなく企業内の組織間で交錯する利害関係の壁を越えたプロジェクトの運営が重要であることはいうまでもない(ITR Review 2014年2月号「大規模ITプロジェクト成功の本質」 #R-214022)。