日本をはじめとする先進工業国で、スマートファクトリーが注目されており、多くの企業で試行や具体化に向けた取り組みが進められている。企業は、スマートファクトリーを究極の自動化工場と位置づけるのではなく、ビジネス全体におけるデジタル革新の一貫として計画の策定にあたるべきである。
製造業のデジタル化において中核となるスマートファクトリー
デジタル技術を活用したビジネス革新や、デジタルビジネスの創出に多くの企業が取り組んできているが、製造業は、インダストリー 4.0とインダストリアル・インターネットの両イニシアティブの影響を早くから受けてきた。なかでも、スマートファクトリーは高い関心を集めており、IoTを活用した製品および設備のスマート化、製造ビッグデータの解析による生産性と品質の向上、マスカスタマイゼーションによる顧客・個客仕様対応力の向上など、ものづくりの競争力を左右する重要なテーマが存在している。また、製造工場単体ではなく、原材料および倉庫・物流などサプライチェーン上のさまざまなステークホルダーに関わる設備や、システムがネットワーク化された「つながる工場」により、高度な自動化や無人化が大きく進んでいくことが予想される。その背景にあるのが、中国、東南アジアなどの新興工業国が世界の製造拠点として台頭してきていることにあるのは言うまでもない(ITR Insight 2015年春号「Industrie 4.0から学ぶべきもの」 #I-315042)。
新興国は安かろう悪かろうといった時代はすでに過ぎ去り、むしろ先進国より短納期かつ安い、パートナー同士の緩やかな水平分業化による機動性と柔軟性が高いなどの理由から、マスカスタマイゼーションへの対応力も高いと評価されるようにもなってきている。むしろ、先進国の製造業が、巨額の投資により設備/システムの垂直統合化による量産を重視する一方で、顧客や市場が求めるスピードへの対応力が見劣りする場合もある、といってもよいかもしれない。このような状況において、垂直統合化による生産効率向上と水平分業化による迅速性を両立しつつ、マスカスタマイゼーションへの対応を可能とするスマートファクトリーに大きな期待が集まっていると、ITRでは見ている。