クラウドサービスに代表されるサブスクリプション型の提供方式は、今後、新たなITソリューションやデジタルビジネスにおいて適用対象を広げることが予想される。企業は、サブスクリプションのもたらす付加価値とリスクを認識して、ビジネスの収益構造をデザインすることが求められる。
サブスクリプション・モデル
サブスクリプションとは定期利用、加入契約、会員制といった意味を持つ、いわゆる継続利用を前提としたサービス提供のモデルである。一般消費者の立場で馴染みが深いのは、携帯電話の加入サービスや電力会社との契約であろう。利用者(サブスクライバー)は、定められた条件のもと契約期間内にサービスを利用する権利を与えられる。最近では、電子書籍や音楽配信といったデジタルコンテンツのサブスクリプション・サービスも増えている。月額1,000円で見放題といったように利用範囲が広いサービスも少なくない。他にも、特に海外では、ファッション、玩具、生理用品、カミソリの刃などさまざまな日用品に関わるサービスが矢継ぎ早に台頭している。
このように、個人の消費行動は「モノの所有」に加えて「サービスの利用」の選択肢が増えつつあるが、企業が利用するビジネスソリューションにも同類の変化が起こってきている。例えば、航空機のエンジンや一部の産業機器の分野ですでにAs a Service方式のソリューションが台頭しており、契約期間や利用量に応じたサービス課金方式での取引が行われている(ITR Review 2017年3月号「Product as a Serviceの潮流」#R-217031 )。
ビジネス用途の商材におけるサブスクリプション・サービスの代表例としてクラウドサービスがあげられる。IaaS、PaaS、SaaSといったパブリッククラウドが、モノではなく、サービスとして供給されることを知る人は、IT従事者でなくとも多いだろう。ただし、サブスクリプションがすなわちクラウドサービスというのではない。オンプレミスであってもサブスクリプション・モデルを適用することはできるし、一部のソフトウェア・ベンダーは、すでにそのような戦略シフトを行っている。Microsoft社、Adobe Systems社などのクライアント製品ベンダーはその代表的なベンダーといえるだろう。ここでは、ひとつの成功例として、Adobe Systems社の例を見てみる。