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ITR Review

コンテンツ番号:
R-217031
発刊日:
2017年3月1日

Product as a Serviceの潮流

加速するサービタイゼーション

著者名:
金谷 敏尊
Product as a Serviceの潮流のロゴ画像

製品を販売するのではなく、製品がもたらす価値をサービスとして提供するビジネスモデルが、注目を集めている。サービタイゼーションと呼ばれるこの動向は、サービスとしての製品(Product as a Service)の開発を促し、製造業におけるデジタルビジネスの推進を加速させている。

Product as a Serviceとは何か

有名なマーケティングの格言に「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」というものがある。ドリルを買う消費者が本当に欲しいのは、壁や板に空いた穴、すなわち「成果」を適時に安価で手に入れることであり、必ずしも道具を所有することではない。表層的なニーズではなく、本質的な顧客ニーズを捉えることの重要性が示唆されている。

この顧客ニーズの本質を見据えて、製造業におけるいくつかの先進企業が、価値や成果に基づいて課金するサービスの開発に乗り出している。それまでのように、単に製品を製造して販売するのではなく、製品をサービスとして提供するビジネスモデルであり、「Product as a Service」と呼ばれる。

製品をサービスとして提供するという意味では、リースやレンタルが思い浮かぶ。しかし、Product as a Serviceは、ネットワークを通じてセンター側で監視・管理されている点(Connected-Devices)、IoTテクノロジで機能や性能を制御できる点(Software-Defined)、ユーザーがメンテナンスを気にせずに済む点(Maintenance-Free)、提供される実績に基づいて課金される点(Performance-Based)などの点でそれらと異質なものである。故障対応、アップデート、パフォーマンス計測などをセンター側で管理することで、品質を高め、総コストを抑える。そのうえで、ユーザーが享受した価値、基本的には利用時間に応じて定められた料金を徴収するサービスモデルとなる。

製品や設備を継続的に提供するモデルとしては、アウトソーシングサービスも、Product as a Serviceに似た側面がある。しかし、BPOやITOといったアウトソーシングは、固有のニーズに合わせてカスタム構築した環境や体制で行うのが一般的で、そのほとんどは相対契約となる。リソースやタスクも多岐に及ぶことから、あらかじめ決められた価格テーブルに基づいて、実績に基づいた課金を行う例も一部にはあるが、少数である。

従来型ビジネスのなかでは、電気・ガスなどのユーティリティサービス、また、IT業界におけるクラウドサービスや従量課金型の通信サービスが、Product as a Serviceに近いサービスモデルといえる。これらは、契約期間に特定の利用権をユーザーに与えるエンタイトルメント・サービスであり、定められたルールに基づいて料金を徴収する形態のビジネスである。

Product as a Serviceを提供するうえでは、利用期間や利用権(ライセンス)に応じて課金する形態のサービスモデルを構築しなければならない。それには、製品とライセンスを切り離して捉え直す必要がある。そもそも一般的なモノ売りでいうところの製品とは、「耐用年数が定まった製品と永久ライセンスのセット」に他ならない。DIYショップで購入したドリルを手にとっても我々は、それを利用する権利(ライセンス)があるのは当然のこととして、意識すらしない。しかし、Product as a Serviceでは、製品ではなく、サブスクリプション(定期使用)のライセンスに基づいて供給されるサービスである。製品はもちろん重要であるが、サービスやライセンスをいかにデザインするかが、モノにかかわるビジネスの今後を左右することとなる。

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