デジタライゼーションが進み、IoTやスマートデバイスを活用したビジネス形態が増えつつあり、少なからず企業は関連事業における収益メカニズムの見直しを迫られている。本稿では、デバイスに搭載されるソフトウェアに焦点を当てて、今後求められる収益化の考え方とソリューションについて考察する。
IoTにおける収益化の課題
社会や産業においてデジタライゼーションが浸透し、既存事業の枠を超えたデジタルビジネスが産声をあげるなか、提供するソフトウェアやサービスをいかに収益化するかが、ソフトウェア・ベンダーだけでなく一般企業においても課題となりつつある。一方、旧来よりソフトウェアを提供してきたベンダーやクラウドサービス事業者においては、製品ポートフォリオの複雑化やライセンシング形態の多様化、あるいは新たなビジネスモデルの台頭から、収益性を確保するための最適な価格体系を慎重に見極めることが求められている。このように多くの企業や事業者にとってソフトウェア収益化戦略は課題であるが、とりわけIoTに注力するデバイスメーカーにおいては今後避けられないテーマとなりうる。
現在、IoTに関わる要素技術は各々の領域で開発や標準化が進められている。例えば、アプリケーション領域ではAPIや開発環境をオープン化することで、収集・分析される膨大なデータを利活用するための環境を整備する動きがある。データソースとなるデバイス領域では、スマートデバイス、ユビキタスモジュール、センサーチップ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの製品化がなされ、これに合わせて近距離通信を実現するネットワーク技術の開発も進んでいる。また、IoTに関わる企業、開発者、エンドユーザーが共通的に利用できるクラウド基盤として、産業界のトップ企業やITベンダーがIoTプラットフォームを展開する例も見られる(ITR Review 2015年8月号「IoTが牽引する産業プラットフォーム」#R-215084)。
これまで独立していた「モノ」や「ヒト」をインターネットにつなぐという観点から見れば、これまでデジタルとは無縁であった極めて多種のオブジェクトが将来、スマートマシン化することになる。しかし、このことは、現行の設備機器、産業機械、電化製品、IT機器といった、すでにチップセットを備えるオブジェクトもまた、スマートマシン化することをも意味する。現行のデバイスや製造工程に手を加えることはコスト増を招き、一見不利益にも見えるが、ハードウェアをソフトウェアで制御し、コネクティビティを確保することで、製品のアップセルやクロスセル、あるいは訴求力の増大や管理負荷の軽減をもたらすケースも増えており、利益的な側面も大きい。デバイスメーカーは、既存ビジネスにおける収益向上を目指して、IoTに取り組むことが有益である。