企業内あるいは企業グループ内でのIT集約・統合が進んでいる。クラウドサービスに代表されるサービス化の波は外部市場のみならず社内にも及んでおり、大手企業グループを中心として、技術の標準化と共通化による「IT as a Service」の展開が加速してきている。
競争力を求められる従来型IT
デジタル技術の市場浸透により、現在、多くのIT従事者の関心はデジタルイノベーションに向けられている。企業も未来のビジネス競争優位に向けて、デジタル技術を活用するビジネス・イネーブラとしてのIT組織の必要性を認識し始めている(ITR Review 2015年3月号「ビジネス・イネーブラとしてのIT組織」#R-215031)。しかし、そのことによってIT部門が従来から担ってきた役割から解放されるわけではない。システムの安定稼働/障害対応、セキュリティ管理、パフォーマンスの改善といった従来型の機能は依然として必要である。むしろ、さらなる効率化を追求することで、より高い競争力を備えることをIT部門は求められている。
この背景には、優れたパフォーマンスや圧倒的な価格競争力を備えるクラウド事業者の躍進がある。旧来よりIT部門は、企業に固有の情報システムの構築や運用を支えてきたが、パッケージの導入や外部のクラウドサービスの活用が進んだことで、存在意義は徐々に希薄なものになりつつある。企業がITの自前主義を標榜し、自製システムに固執する間は、Salesforce社やAmazon.com社といったベンダーにIT部門が比肩する必要はなく、またその意味もない。しかし、多くのIT部門がこれら外部の破壊的イノベーターを脅威と認識し、プレッシャーを抱えているのは事実である。
こうした状況からIT部門は近年一層、規模経済性の向上とユーザー利便性の改善に取り組むこととなった。全社あるいはグループワイドでのデータセンター統合はその典型的なものといえるだろう。特に大手企業ではITインフラのグループ集約が進む傾向にある。ITRの調査では、超大手企業(従業員1万名以上)の6割相当がグループ共通のITインフラを構築していることが示される(図1)。
出典:ITR(2015年4月調査)