昨今、サービスデザインに対する注目が急速に高まっている。サービスデザインとは、顧客接点(タッチポイント)の最初から最後に至る一連の流れにおいて、顧客に提供するサービス価値の向上を図るための取り組みである。本稿では、サービスデザインの概要と共に、IT部門がどのようにサービスデザインに取り組むべきかを述べる。
サービスデザインが注目される背景
社会インフラの急速なデジタル化において、ITを戦略的に活用するイノベーションが、経営やビジネスに大きな影響を及ぼそうとしている。ITRでは、こうしたデジタルイノベーションがもたらすインパクトを、「社会・産業のデジタル化」「顧客との関係のデジタル化」「組織運営・働き方のデジタル化」の3つの方向性で注視している(ITR Review 2014年9月号「デジタルイノベーションの潮流」 #R-214091)。サービスデザインは、まさに「顧客との関係のデジタル化」において、従来の販売チャネルや顧客接点(タッチポイント)のあり方を見直しつつ、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験、顧客経験価値)向上を図る施策と共に注目を集めている。具体的には、デジタルマーケティングやO2O/オムニチャネル推進における上流の設計で重視されるようになってきている。
マス・マーケティングやマス・プロダクションだけで通用した時代は過ぎ去り、タッチポイントおよびそのバックエンドのサービスで差別化すべきとの認識を持つ企業が増えてきていることがその背景としてある。また、サービスデザインは、間接的にビジネスに貢献するこれまでのITだけではなく、ビジネスに直接貢献できるビジネスITを強化する際の、欠かせざる要素としても期待されている。