データ処理の高速化は、現状システムの性能に問題を抱える多くの企業が切望している。そのようななか、主要なデータベース製品がインメモリ機能を強化してきており、OLAPだけでなくOLTP処理を両立した性能向上をアピールしている。業務システムにおけるインメモリ処理の効果について、SAP社のHANAの動向を基に考察する。
データベースにおけるインメモリ機能の強化
データベースにおけるインメモリ処理の概念は決して新しいものではなく、主要なデータベース製品は、並列処理やキャッシュなどを当時のハードウェアの限られたメモリ空間上で活用してきた。ここにきて、SAP社のHANA/アプライアンス製品、Microsoft社のSQL Server 2014/SQL Server SSDアプライアンス、IBM社のDB2 V10.5/PureSystemsシリーズなど、インメモリ、カラムストア機能を強化した新製品およびハードウェア・アプライアンスの発表が続いている。そして、データベース最大手のOracle社は、2013年9月23日のOracle OpenWorld 2013で、Oracle Database 12cにインメモリとカラムストア機能をオプション追加すると正式発表した。Oracle社は、Times10、Coherenceなどインメモリ専用のデータベース製品を早くから提供してきており、Oracle Database 11gから並列処理やインメモリ機能を強化するとともに、Exadataデータベース・マシンなどのエンジニアド・システムでデータ処理の高速化に注力してきたが、先の発表でデータベースの基本機能強化の方向性も明確にしたといえよう。
主要データベース各社のインメモリ、カラムストア、データベース・アプライアンスが出揃ってきたことで、ビッグデータやデータ分析におけるデータ処理の高速化だけでなく、業務システムの大量データ処理性能に問題を抱える企業が高速化の効果に注目してきている。例えば、どれだけ高速化できるのか、その効果は投資に見合ったものなのか、既存のアプリケーションを変更することなく利用できるのか、これまでと同様に運用できるのか、どこまでスケールアウトできるのか、などについて関心が高くなっている。HDDからメモリ上に処理を移すことで、計算上は、ミリ秒からナノ秒への高速化、すなわち百万倍の性能向上が図れるとも推定できる(ITR Insight 2013年夏号「ビッグデータの本質と対応策」 #I-313072)。
しかし、企業が望むデータ処理高速化の効果は、理論値やハードウェア単体のベンチマークなどではなく、実際の業務システムにおける処理がどこまで高速化できるか、それによりどのような効果が得られるかにある。