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ITR Review

コンテンツ番号:
R-225064
発刊日:
2025年6月6日

トランプ関税がIT支出とIT調達に及ぼす影響

調達の国内回帰とサプライチェーンリスクの分散

著者名:
入谷 光浩
トランプ関税がIT支出とIT調達に及ぼす影響のロゴ画像

米国による相互関税政策(通称:トランプ関税)は、国内企業のIT支出やIT製品の調達にどのような影響を及ぼすだろうか。本稿では、ITRが2025年4月に緊急実施した『米国の関税政策にかかるIT動向調査』の結果を基にその影響を分析し、今後の見通しについて考察する。

IT項目別支出の変化

米国政府が2025年4月に公表した相互関税政策(通称:トランプ関税)は、PCやサーバなどIT製品の価格を押し上げ、さらにサプライチェーンの混乱による調達リスクも増幅させる恐れがある。ITRは、国内企業への影響を迅速に把握するため、IT戦略の策定やIT実務を担当する課長職以上1,271名を対象に、2025年4月22~24日に緊急調査を実施した。本稿では、本調査の結果から、IT支出の変動見込みとIT製品の調達方針に関する動向を分析する(企業のビジネス全体およびIT/DX戦略への影響については、ITR Review『「トランプ関税」で懸念されるDXの停滞』R-225063を参照されたい)。

まず初めに、トランプ関税の影響によって、ハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービスなどの各IT支出がどのように変動すると見込んでいるかを問うた(図1)。全ての項目で「変わらない」との回答が60%前後を占め、様子見の姿勢は多い。増額と減額の差に着目すると、ハードウェア支出(サーバ/ストレージ/ネットワーク機器、PC、モバイルデバイス)は、いずれも減額の回答割合が増額を2~5ポイント上回っている。ハードウェアは、米国と中国のベンダーの製品が多いため、関税の影響による価格の上振れを警戒して、支出を抑制する動きが読み取れる。

図1.トランプ関税に伴う国内企業のIT支出の変動見込み

図1.トランプ関税に伴う国内企業のIT支出の変動見込み
出典:ITR『米国の関税政策にかかるIT動向調査』(2025年4月調査)

一方、「IaaS/PaaS」と「SaaS」は、増額の回答割合が減額を上回っている。これは、ハードウェアの価格や調達コストの上昇を想定し、クラウドサービス利用へと投資先をシフトする動きとみることができる。もうひとつの見方としては、データセンターで使用するハードウェアや設備機器の調達コストの上昇分が、クラウドベンダーのサービス料金に転嫁され上昇することを考慮しているとも考えられる。企業は、ハードウェアの価格と同様に、クラウドサービス料金の動きも注視していく必要がある。

また、増額の回答割合が最も高かったのは、「IT人材の採用コスト」である。関税でモノやサービスの調達が読みづらくなることで、内製開発力や運用スキルを確保し、ITやDXの体制を強化することを優先する企業が増えていくと考えられる。これらのことから、ハードウェアの調達を抑制しつつ、その分、クラウドサービスとIT人材への投資を増やすことで、不確実性の高い今の状況に柔軟に対応しようとする企業の姿勢がうかがえる。

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