一般財団法人日本情報経済社会推進協会(所在地:東京都港区、会長:杉山 秀二、以下、JIPDEC)と株式会社アイ・ティ・アール(所在地:東京都新宿区、代表取締役 三浦 元裕、以下、ITR)は本日、国内企業1,022社のIT/情報セキュリティ責任者を対象に、2023年1月に共同で実施した『企業IT利活用動向調査2023』の一部結果を速報として発表いたします。
今回の調査結果のポイントは、次の7点があげられます。
- 電子契約の利用企業は前年の69.7%から73.9%に拡大。「立会人型と当事者型の両方を採用」している企業の割合が4ポイント増
- 電子契約サービス事業者の選定時、半数近くが「クラウドに関するセキュリティ認証」取得を参考
- インボイス制度の登録申請は65.6%が「提出済み」、「提出予定」を含めると88.6%に上る
- テレワークを「導入している」割合は、前年の72.7%から72.1%に微減
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の目的は、「コスト削減」と業務効率化に重点
- 個人情報保護の取り組みは、「社員教育」が57.6%で最多
- 重視する経営課題は、「従業員の働き方改革」が2年連続で増加
■電子契約の利用企業は、前年から増加し73.9%に
電子契約を「利用している」企業は、前年の69.7%から73.9%に拡大しました。なかでも、「立会人型と当事者型の両方を採用している」企業の割合が4.3ポイント増と最も増えました。
■電子契約サービス事業者の選定時、半数近くが「クラウドに関するセキュリティ認証」取得を参考
利用が拡大している電子契約においてサービス事業者を選定する際に、参考にする第三者認証サービスは、「クラウドに関するセキュリティ認証」が44.6%を占め、他の認証サービスに大きく差をつけました。
なお、電子契約事業者の選定時に重視するポイントとしては、「第三者認証・認定の取得」が41.5%に上り、「サービスのコスト」48.6%の次に高い割合となりました。
■インボイス制度の登録申請は65.6%が「提出済み」、「提出予定」を含めると88.6%に上る
2023年10月から導入されるインボイス制度に対応するため、34.3%が適格請求書発行事業者として「登録申請書を提出し、すでに登録番号の通知を受けている」ことがわかりました。これに「提出済みで登録処理中」とする31.3%を合わせると、65.6%が提出済みとなりました。「今後提出予定」(23.0%)まで含めれば、88.6%に上りました。
■テレワークを「導入している」割合は、前年の72.7%から72.1%に微減
企業の勤務形態としてテレワークを「現在導入している」企業は、前年の72.7%から微減して72.1%となりました。「全面的に導入中」である企業は14.3%で、最多は「出社とテレワークを併用」している企業で4割弱を占めました。
■デジタルトランスフォーメーション(DX)の目的は、「コスト削減」と業務効率化に重点
近年、企業の取り組みが進展しているデジタルトランスフォーメーション(DX)の目的としては、「コスト削減」(60.7%)が最も多く、これに、「労働時間の短縮」(46.6%)および「人員削減」(38.4%)が続きました。一方、「既存事業の拡大」や「新規事業の開拓」は2割前後にとどまっており、事業拡大よりも業務効率化を目的とした取り組みが多いことがわかりました。
■個人情報保護の取り組みは、「社員教育」が57.6%で最多
個人情報保護のための企業の取り組みとしては、「社員教育」が57.6%で最も多く、「個人情報保護管理体制の構築」(48.6%)と「規程類の整備」(39.7%)が続きました。
■重視する経営課題は、「従業員の働き方改革」が2年連続で増加
重視する経営課題としては、「業務プロセスの効率化」(52.8%)および「従業員の働き方改革」(45.9%)が上位にあがり、特に後者は2年連続で増加しました。また、今回は「社内体制・組織の再構築」をあげた企業が前回と比べ最も増加しました。
調査結果を受けて、ITRのコンサルティング・フェローである藤 俊満は以下のようにコメントしています。
「コロナ禍を機に利用が拡大したテレワークとクラウドサービスは、現在多くの企業で定着しつつあります。これを背景に、企業が重視する経営課題では、『業務プロセスの効率化』と『従業員の働き方改革』が引き続き上位にあがりました。2023年10月施行のインボイス制度への登録申請については、2023年1月の調査時点ですでに約6割強の企業が申請を終えており、提出予定を含めると約9割に上ることが確認できました。個人情報保護の取り組みでは、『社員教育』が重視されました。本調査では電子契約の利用企業は7割超を占め、電子契約サービス事業者の選定では『クラウドに関するセキュリティ認証の取得』が重視されていることが明らかとなりました。これらの動きを受けて、従来の境界防御型セキュリティ機器が減少に転じ、代わってゼロトラストアーキテクチャ型セキュリティサービスが増加し、セキュリティアーキテクチャの転換期を迎えているといえます。」
■本調査について
本調査は、JIPDECとITRが2023年1月19日から1月20日にかけて実施したものです。調査は、ITRの独自パネルに対するWebアンケート形式で実施し、従業員数2名以上の国内企業に勤務しIT戦略策定または情報セキュリティ施策に関わる係長職相当職以上の役職者約1万7,000名に対して回答を呼びかけ、1,022名の有効回答を得ました(1社1名)。
今回発表した動向だけでなく、情報セキュリティ対策の具体的な取り組み状況、製品/サービスの導入状況、認定/認証制度の取得状況など、広範にわたる調査を実施しています。調査結果の詳細は、JIPDECが2023年5月下旬に発行予定の『JIPDEC IT-Report 2023 Spring』に掲載し、Web公開する予定です。
■JIPDECについて
JIPDECは、1967年よりわが国の情報化推進の一翼を担い、技術的・制度的課題の解決に向けたさまざまな活動を展開しています。特に、安心安全な情報利活用環境の構築を図るため、プライバシーマーク制度の運営や、メールのなりすまし対策や電子証明書を発行する認証局等の信頼性を評価するトラストサービス評価事業等、個人情報の取扱いやプライバシーガバナンス等、情報の保護と活用に関する調査研究・政策提言等を行っています。
■ITRについて
ITRは、客観・中立を旨としたアナリストの活動をとおして、最新の情報技術(IT)を活かしたビジネスの成長とイノベーションの創出を支援する調査・コンサルティング会社です。戦略策定から、プロジェクトの側方支援、製品・サービスの選定に至るまで、豊富なデータとアナリストの知見と実績に裏打ちされた的確なアドバイスを提供します。2000年からは毎年、国内企業の情報システム責任者に対する『IT投資動向調査』を実施しています。ITRは1994年に設立、東京に本社を置いています。