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ITトレンド開催報告

IT Trend 2023開催レポート
「再起動する経済・社会で求められる企業IT像」をテーマに、ITRアナリストが講演

ITRは、ITRアナリストの日々の活動と市場調査結果の集大成を披露する年次コンファレンス「IT Trend 2023」を、124日から128日までオンデマンド型のオンライン配信で開催した。今年のテーマは「再起動する経済・社会で求められる企業IT像」。コロナ禍の収束の機運が高まり、国内でも経済・社会活動が再び活気づいているなか、企業は再びどのような成長戦略を描いていけばいいのか。生成AIをはじめとする先端テクノロジをビジネスでどのように活用し価値を創出していけばいいのか。本コンファレンスでは、ITRアナリストによる全11のセッションが配信され、国内のITエグゼクティブ/リーダーに対して提言を行った。ここでは3つの講演を紹介する。

国内企業は、より人的資本経営に注力し、一人当たりが創出する価値を大きくしなければならない

はじめに、エグゼクティブ・アナリスト 内山 悟志による『人的資本経営に資するDXとは』を紹介する。内山は冒頭、「多くの企業でDXが浸透せず、なかなか定着しない現状がある。その要因の多くは、経営者や従業員の意識やスキル、組織カルチャー、評価制度など企業内の“人”の問題が深く関わっている」と問題を提起した。企業はこれまで人材に投じる資金を「人的資本」としてコストと捉えていたが、これからは成長と価値創造に向けた投資として捉えていくことになる。世界の潮流は人的資本などの非財務資本に対する価値が企業の源泉として考えられ始めているが、天然資源が乏しく少子高齢化を迎えている国内企業は、より人的資本経営に注力し、一人当たりが創出する価値を大きくしなければならないと内山は指摘した。

ITR 会長/エグゼクティブ・アナリスト 内山 悟志

ITR 会長/エグゼクティブ・アナリスト 内山 悟志

続いて、人的資本経営の共通要素とDXが目指す企業像の要件は深い関係性があり、相互補完関係にあることを説明。人的資本経営を実現するために必要なDX施策やデジタルテクノロジを整理している。さらに内山は、生成AIがコスト削減や業務効率化のような「守り」の人的資本経営だけではなく、付加価値業務への人材シフトや創造性を拡充するための「攻め」の人的資本経営にも適用できる可能性が非常に大きいと分析した。最後に、「人的資本経営に大きく舵を切ることがDXの成功だけではなく、生き残りをかけた企業変革を断行するうえで不可避である」と、この30年間経営スタイルが変わらない日本企業に警鐘を鳴らした。

将来のビジョンを定めてソリューションの仮説検証を行う「ビジョン駆動型」のアプローチを推奨

2つ目の講演は、プリンシパル・アナリスト 金谷 敏尊による『DX時代のビジネスプロセス革新』である。金谷は、製薬・化学業界におけるAI創薬や製造・エネルギー業界におけるCO2可視化の例など、最近のさまざまなビジネス分野におけるプロセス革新の例を紹介し、収益改善、品質向上、環境保護の面で企業価値の向上をもたらしていると述べた。しかし、日本と米国の調査結果を比較すると、国内企業はビジネスプロセス革新による成果を十分に享受していないのではないかと指摘した。

ITR 取締役/リサーチ統括ディレクタープリンシパル・アナリスト 金谷 敏尊

ITR 取締役/リサーチ統括ディレクター/プリンシパル・アナリスト 金谷 敏尊

では、ビジネスプロセス革新をどのように進めたら成果が出せるだろうか。金谷は、プロジェクトの計画化と予算化の前にスモールスタートでの試行と検証を迅速に行い、投資価値を見極めるプロセスが重要だと語った。具体的には、外部環境の分析や技術トレンドを把握したうえで、将来のビジョンを定めてソリューションの仮説検証を行う「ビジョン駆動型」のアプローチを推奨した。最後に、サステナビリティが重視される現代においては、「社会/環境課題をデジタル技術で解決するという視点を持つことが求められるようになっている」ということを強調して締めくくった。

2024年度に投資が期待される製品・サービスとしては、「AI/機械学習プラットフォーム」「生成AI」などAI関連が上位に

3つ目の講演は、プリンシパル・アナリスト 三浦 竜樹による『『IT投資動向調査2024』から紐解くIT投資とDXの成果』を紹介する。IT投資動向調査はITRが2001年から毎年実施している調査で、最新の調査は今年の8~9月にかけて実施された。IT投資予算の増減傾向を示すIT投資インデックスにおいて、2023年度実績は過去最高値であった2006年度に迫る数値となった。「ここ数年IT予算を増やしていく傾向が国内企業で多く見られる」と三浦は分析した。

ITR プリンシパル・アナリスト 三浦 竜樹

ITR プリンシパル・アナリスト 三浦 竜樹

DXテーマ別の取り組み状況は、「製品・サービスの付加価値向上」「新製品・サービスの創出」「他社との共創・エコシステム構築」について取り組む企業が2022年度から2023年度で上昇し、DXによって製品・サービスの競争力向上を図る企業が増えていることが今回の調査で特徴的であったと三浦は述べた。2024年度に投資が期待される製品・サービスとしては、「AI/機械学習プラットフォーム」「生成AI」などAI関連が上位にあがった。DXで成果を出している企業と出していない企業を比較すると、生成AIの導入率にはそれほど差はないが、投資増減指数に大きな差が見られると指摘。三浦は、「DXで成果を出している企業は、2024年度にさらに生成AIの投資を拡大していく。DXでビジネス成果を獲得するためには、単に導入するだけではなく継続的な投資を行っていくことが重要になる」と考察した。

そのほか、ITRアナリストからは、「AIの活用」「データドリブン経営」「IT基盤アーキテクチャ」「デジタルマーケティング」「IT運用」「セキュリティ」といったテーマの講演を通じて、目指すべき企業IT像に向けた提言を行った。

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