クラウド活用の進展などに伴いIT運用は複雑化し、運用負担増加やスキル空洞化といった負のループが顕在化している。こうした課題に対し、AIエージェントによる自律運用への期待が高まっている。本稿では、AIによるIT運用進化の構造、具体的なユースケース、運用ツールの変化を整理し、IT運用リーダーに求められる視点を考察する。
IT運用の負のループとAIによる自律運用への期待
企業のIT運用環境は、クラウドの本格普及やマルチクラウド/ハイブリッド環境によってシステムが分散し、変更頻度も高まっているため、運用に求められる判断の難易度は年々上昇している。こうした複雑化は運用業務の負担増加を招き、人手だけで対応することを困難にしている。その結果、サービス事業者への外部委託が進み、運用コストの増加傾向が続いているが、自社内の運用スキルやノウハウは蓄積されにくくなっている。こうしたスキルの空洞化は、新たな技術への対応力を低下させ、結果として運用負担がさらに増大するという負のループを生み出す。これは今、多くの企業に共通する構造的な課題となりつつあり、もはや人手の増強や部分的な自動化だけでは抜本的な解決が難しくなっている。
こうした負のループからの脱却を模索する中で、企業の関心がどこに向かっているのかを示しているのが、図1に示す調査結果である。同調査では、企業のIT運用責任者に対して今後IT運用で優先的に取り組むテーマを尋ねており、「AIによる運用の高度化/自律化」が最上位となった。同項目は、前年調査から12ポイン上昇し、他の項目を大きく上回った。
出典:ITR『IT運用管理の実態調査2025』(2025年10月調査)
同調査結果からは、企業の関心が単なる作業効率化や省力化を目的とした自動化から、AIが主体的に判断し対応を進める「自律的な運用」へと移行していることが読み取れる。クラウド環境の拡大に伴い、運用対象は動的かつ非定型なものが増えており、事前に定義したルールやスクリプトだけでは対応しきれない場面が増えている。従来型の運用自動化が限界に近づく中、状況を理解して最適な対応を選択できるAIへの期待が高まっている。