2025年は、AIエージェントの社内実装が本格化し、AI人材確保や活用基盤整備といった組織課題が顕在化した。AIは業務効率化の手段から、企業競争力を左右する経営基盤へと進化しつつあり、あらゆるデータを学習して価値創出するエンタープライズAIの実現に企業は強い関心を寄せている。本稿では、エンタープライズAIへの取り組みが加速する2026年以降において、企業が注目すべき11のIT戦略テーマを提示する。
AIが誘引するビジネス環境の変化
2025年を通じて、AIが誘引するさまざまな技術開発や新サービスの台頭により、企業経営を取り巻く技術環境や市場動向は大きく様変わりした。この環境変化に適応すべく、多くの企業がAI施策の取り組みを加速させている。ITRは、2025年9月にAIシステムの導入・運用の関与者を対象にした調査を行った。同調査結果から、企業における具体的なAI施策の取り組み状況を見てみよう(図1)。
出典:ITR『AIスキルシフトに関する意識調査』(2025年9月調査、N=407)
同調査では、AI施策の主な目的として、「基盤整備(AI活用のための環境整備)」「業務改善(既存業務の効率化)」「業務変革(業務プロセスの刷新)」「事業拡大(収益の向上)」の4つを示し、それぞれに複数の施策案を選択肢としてあげた。この結果、現在実施が進んでいる施策は、「基盤整備」と「業務改善」に多く見られ、特に「AIポリシー/ガバナンス体制の整備」と「生成AIサービスの利用推進(例:ChatGPTなど)」が60%と高い実施率であることが明らかとなった。次いで、「AI研修/人材育成プログラムの推進(48%)」と「社内RAGチャットサービスの構築・展開(39%)」も多くの回答を得ており、将来の実施率は過半数に達することが予想される。また、2025年のビッグワードであった“AIエージェント”についても、「AIエージェントの業務適用(39%)」や「AIエージェント管理基盤の構築(35%)」と急速に導入が進んでいる。これらの実施率も近い将来に半数を超えると予想され、もはや企業活動に不可欠の取り組みといってよいだろう。
「業務変革」に関わる施策はやや実施率が低く、「事業拡大」においてはその傾向がさらに顕著である。しかし、将来的な実施意向はいずれの施策においても一定数存在し、今後実施企業は増加していくとみられる。エンタープライズAIが成熟するにつれ、企業は競争力強化に直結する、より大きな成果につながる施策を推進する力が問われることとなろう。
2026年以降、企業はAIを前提としたIT戦略を打ち出すことにより、新たな企業モデルへの変革を加速する必要がある。そこでITRでは、AIが誘引する環境変化を踏まえ、国内企業が注目すべき11個のIT戦略テーマを選出し、「ITR注目トレンド2026」に取りまとめた。2026年は、「AIによる競争力創出」「ITマネジメントの高度化」「人材・知識の戦略的活用」の3つの戦略指針に沿って戦略テーマを整理している(図2)。以下に、各戦略テーマの概要と将来予測を紹介する。
出典:ITR