AI技術が進展する中、IT部門の働き方や仕事はどう変わるべきなのだろうか。企業全体がよりスリムでフラットな組織運営になり、中間管理職などのミドルマネジメント的な業務が削減されることに加えて、AI技術の特性がその流れをさらに加速する方向性にある。IT部門は、そうした状況に適応しながら、新たなケイパビリティを強化していかねばならない。
AIによる仕事や働き方の地殻変動
多くの企業は、中間管理職などのミドルマネジメントやアシスタント職の仕事を減らし、よりフラットなチーム体制で組織再編を図りながら、スキルと能力を中心とした従業員の労働力再構成に取り組んできた。その触媒として、それぞれの時代の経営環境、雇用環境、そして技術トレンドが大きく関わってきた。こうした状況下で、AI技術の進展に伴い、「AIが全てを変える」あるいは「AIが雇用を奪う」といった両極端な見解が報道されるようになってきている。しかし、雇用の流動性が高い米国でこうした報道がクローズアップされると、AIが数万人の雇用を奪う異常な状況であるかのような錯覚を生じさせる点には注意が必要である。例えば、米国の雇用統計調査として広く知られるChallenger, Gray & Christmas社が発表する通称「Challenger Job Cut」によれば、2025年初頭から10月末までのJob Cut(雇用削減、人員整理)の要因を分析するとAIに起因するものは下位に位置する。上位は、DOGE(政府効率省)の指令、市場/経済環境の悪化、リストラ、経費削減といった要因であり、現時点ではAIに起因するJob Cutはこれらを下回っている。
しかし、AI技術が仕事や働き方にとって地殻変動的なポテンシャルを有していることは確かであり、先進的にAIを活用している企業ではすでに顕著な変革が見られるようになってきている。80:20のパレートの法則になぞっていえば、「80%の仕事はAIによって少なくとも20%は変化する」一方で、「20%の仕事は80%も変化する可能性がある」といった変革の度合いは、企業の状況により異なってくるだろう。重要性が低いが作業量の多い80%の業務では20%程度の効率向上しか見込めない一方で、重要性の高い20%の業務においては劇的に80%もの変革が実現する企業があるかもしれない。あるいは逆に、重要性の高い80%の業務が20%程度しか変わらず、重要性の低い20%の業務の大部分が削減できるケースもあり得る。どのような配分や割合になるかは、業務の質、効果測定の基準、そしてAIをどのような業務に適用するかによって異なってくるだろう。