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ITR Review

コンテンツ番号:
R-225111
発刊日:
2025年11月4日

AIスキルシフトの進展

企業に求められる人材の将来像

著者名:
金谷 敏尊
AIスキルシフトの進展のロゴ画像

AIテクノロジの進展によって、一部の職種では自動化が進み、新たな枠組みの職務へのニーズが高まると予想される。企業の人事部門は、職務ごとのAIの影響を鑑みて、人材のスキルシフトを推進すると同時に、人材ポートフォリオの見直しを検討することが急務となる。

進むAIスキルシフト

AI活用を前提とした企業組織やビジネスモデルへの転換を進める中で、求める人材の将来像とは何か、そのためにどのようにスキルシフトを進めるべきかといった点が、昨今、多くの企業にとって重要課題となっている(ITR Review『AIポジティブの世界観』R-225091)。AIを推進する企業では、将来の人材像をどのように捉えているだろうか。ITRでは、AIの進展が企業の人材とスキルに及ぼす影響を明らかにする目的で、2025年9月にAI関与者を対象とした調査(『AIスキルシフトに関する意識調査』N=407)を実施した。

同調査では、企業の職務を14タイプに大別し、AIにより業務効率化と業務高度化がどれだけ進むかを問うた。具体的には、各職務の「業務効率化(時間短縮、作業省力化、コスト削減など)」と「業務高度化(質的改善、分析力向上、付加価値創出など)」のレベルについて4段階で評価を得ている。この評価結果を指数化することにより、AIが及ぼす各職務への影響をスコアリングした(図1)。

図1.職務へのAIの影響と将来のロールモデル

r-225111_01
指数:進まない(-3)、部分的に進む(-1)、かなり進む(1)、飛躍的に進む(3)の加重平均を算出。理論レンジ(X:-3~3、Y:-3~3)の中心部(X:-1~1、Y:-1~1)を表示
出典:ITR『AIスキルシフトに関する意識調査』(2025年9月調査)

全体としては、いずれの職種も業務効率化の度合いが高く評価された。業務高度化についても、業務効率化ほどではないが、一定水準進むことが見込まれている。これらが具体化する時期に関しては、5年以内との回答が96%を占め、特にIT系、エンジニアリング系、事務系の職務は、2030年には5~7割の業務分野が自動化されると予想される。

AIの進展が及ぼす影響は職務によって違いがあるため、各職務のスキルシフト(あるいは他職務への配置転換)の進み方も異なるものになるとみられる。そこで、評価結果の近い職務をグルーピングし、各グループの目指すべき将来像となるロールモデルを考察した。ここでは、A:統括者、B:共創者、C:コミュニケーター、D:構想者と称することとし、以下に各々を説明しよう。

■グループA:急速な効率化と高度化が同時進行する職務分野である。2030年には、全自動化を視野に入れた取り組みが進むことから、同分野での職務は、AIエージェントを監視して、管理・監督する「統括者」としての役割が中心的となる。
■グループB:コンテンツやデータの生成・分析の多くが自動化されるが、そこから洞察や価値を導くための人間の役割が完全になくなることはない。アーティストのように本質を捉えたり、生成物を鑑定し、価値創造したりする機能を併せもつ「共創者」が将来像となる。
■グループC:AIが業務効率化により大きく貢献する職務分野である。業務高度化へ向けて、ヒューマンタッチを介した人間ならではの価値提供(直感、関係構築、意味づけなど)が大きな意味をもつこととなり、ヒト・モノ・コトを介在する「コミュニケーター」を目指すこととなる。
■グループD:業務高度化/効率化は進むが、相対的には限られた水準にとどまる。職務自体が完全自動化に向かうとは考えられず、目指す姿としては、意思決定に向けてAIエージェントと伴走しながら、「構想者」として職務を遂行するかたちとなろう。

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