DXの推進では、DX推進部門などの専門組織だけでなく、事業部門など現場の積極的な関与が重要となる。昨今、現場部門にデジタルリーダーを設置する動きがみられるが、その活動が十分に機能していないという声が聞かれる。こうした状況を打開し、任命したデジタルリーダーが活躍できるよう、モチベーションの向上と相互扶助を促すコミュニティを組織化することが推奨される。
現場部門のデジタルリーダーの必要性
企業においてDXへの取り組みが活発化してくると、DX推進組織だけでは多数のデジタル化案件を回しきれないという事態に直面する。これは決して悪いことではなく、変革への意識が事業部門などの現場にまで浸透してきたことの証しともいえる。案件によっては事業部門が主体的に推進するほうが、スピード感をもって進められるということもある。そのような場合は、DX推進部門のような横断的組織は、施策実施の後方支援や環境整備に軸足を置くようにし、実際のデジタル化案件の推進主体は、事業部門側に移管するほうが合理的といえる。
このような全社へのDXの取り組みの広がりに対応するために、主に情報共有や部門間調整を目的として、各部門の代表者(担当役員や部門長)を招集した“DX推進委員会”のような会議体を設置する企業も出てきている。また、具体的なDX施策を現場で中心的に推進する“デジタルリーダー”を各部門に任命する動きもみられる。これは、かつて社内ネットワーク環境やオフィスソフトが整備された際に、各部門にOAリーダーを配置した動きと似ている。DXは、業務や事業を変革する取り組みであるため、現場の積極的な関与が欠かせない。DXを全社に浸透させ、定着化させるためには、各部門の自律的な活動を主導するリーダーを設置することが有効な手段といえる(ITR Review『デジタルリーダーの任命と育成』R-222072)。