ビジネス社会は競争社会であり、いつの時代も企業は競争優位に立つための努力を講じてきた。しかし、そのために活用される経営資源や中核的な競争力は、時代とともに様変わりしてきている。今日の企業競争力の源泉となり得る経営資源とは何か。そして、それはどのような方向に向かっているかを考察する。
変遷する経営資源の軸足
企業が重視してきた経営資源とは何か、歴史を紐解いてみよう。産業革命以前は、主に農業社会であったため、土地や自然資源が経営資源として大きな地位を占めていた。また、人手での生産が主であり、労働力も重要な経営資源であったといえる。その後、産業革命を経て、手工業から機械工業の波が押し寄せることとなる。機械や設備に加えて、それらを設置した工場を建設するための運転資金を持つ企業が競争優位を築いた。
20世紀前半には、第2次産業革命により大量生産の時代に入る。効率的な生産プロセスや専門技術を持つ人材が差別化をもたらすこととなる。さらに、20世紀後半になると、消費者の意識が変わり、ブランドが競争力の重要な要素となった。商品やサービスの差別化を図り、効果的なマーケティングを行うことが重視されるようになった。
このような経緯を経て、21世紀には、情報やナレッジが重要な経営資源として認識されることとなった。IT革命やDXを経て、イノベーションが加速し、大量データの分析や独自のAI・機械学習モデルのビジネス活用が進んだ。今後は、サステナビリティの確保に向けた技術やプロセスが重要な経営資源と捉えられる傾向にある。
このように、企業の経営資源の軸足は一定ではなく、時代とともに大きく変遷している。ただし、それは新たなものに置き換わるのではなく、拡張しているのが現状だ。したがって、そのベクトルがどこに向かっているか、軸足をどこに置くかが重要である。現在必要な経営資源を的確に認識して、ポートフォリオを最適化することが求められている。