2023年は、世界経済はコロナ禍からの回復フェーズに入り、さまざまな技術革新がこれを後押しした。この動きは継続し、2023年もテクノロジ主導の社会変革が進む年になると予想される。革新的なテクノロジやコンセプトが世の中に普及する時、他者に先駆けて適用すれば競争優位性を得られる可能性があるが、後手に回ると競争上の不利益を招く。イノベーションの普及においては、アーリーアダプター(初期採用者)とアーリーマジョリティ(初期多数派)の間に大きな溝が存在することが知られる(ジェフリー・ムーア著、『Crossing the Chasm』1991年)。アーリーマジョリティに移行すると、製品やサービスは急速に市民権を得てコモディティ化するため、そこから導入してももはや先行者利益を享受するのは難しい。新テクノロジの導入は、真偽を見極めて適切な時機にその波に乗ることが重要である。経営幹部をはじめビジネス部門、マーケティング部門、IT部門の責任者は、市場トレンドに常に注意を払い、テクノロジの急速な普及の可能性に備えておかなければならない。
しかしながら、グローバルの視座から見ると、日本はこのタイミングを逸し、競争劣後に陥る例が少なくない。デジタル技術によるスマート社会の移行は、世界的なメガトレンド(第4次産業革命)として進行過程にあるが、日本は立ち遅れており、いまなおデジタルに十分に舵を切れないでいる国内企業も少なくない。DX推進組織を持つべきか、DX研修を展開すべきか否かといった議論に多大な時間を費やす例もしばしば見られる。日本のデジタル競争力は他国に劣っており、抜本的な見直しが必要であることは論を俟たない。スイスのIMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)が毎年リリースしている『世界デジタル競争力ランキング』によると、日本の順位は年々後退し、直近の2022年の発表では29位となった。