1. TOP
  2. レポート・ライブラリ
  3. モデルベース製品開発の潮流 - エンジニアリング手法の高度化とデジタル化 -


ITR Review

コンテンツ番号:
R-223031
発刊日:
2023年3月1日

モデルベース製品開発の潮流

エンジニアリング手法の高度化とデジタル化

著者名:
浅利 浩一
モデルベース製品開発の潮流のロゴ画像

デジタル化の進展に伴い、モデルベース開発が注目されている。航空・防衛産業、自動車産業など、先行してモデルベース開発に取り組んでいる企業は、開発スピードや飛躍的な生産性向上などに加えて、継続的なソフトウェアのアップグレードによって製品の差別化と競争力を強化しようとしている。モデルベース開発は、サイバー空間のソフトウェアとフィジカルな製品の融合であり、従来のエンジニアリング手法を拡張する不可避の潮流である。

モデルベース開発とは何か

モデルベース開発は、MBD(Model Based Definition)またはMBSE(Model Based System Engineering)といったキーワードに象徴され、航空機や自動車など複雑性の高い製品を開発・製造する産業で推進されている。製品および製品開発の手法そのものをモデル化してコンピュータ上で設計・開発する手法は、建設業におけるBIM(Building Information Modeling)も同じ狙いによるものといえよう。航空、自動車、建設のいずれの産業も、従来からCADで設計情報をデジタル化することに取り組んできた。しかし、CADを2Dから3Dに変更して莫大な投資を行っても、それだけで製品開発工程の生産性を飛躍的に向上させることは難しかった。なぜなら、過去に開発された製品・部品の要件・仕様・特性が適切に流用できるようにモデル化され体系化されていなかったからである。言い換えれば、顧客の要件に基づいて都度新規に開発・設計する従来手法のまま、CADのデジタル化レベルを向上しても限界があったからである。

モデルをコンピュータ上におけるモノや製品特性の仮想化と捉えれば、こうした取り組みは組み立て製造業だけでなく、プロセス製造業でも推進されている。例えば、製薬企業の米Pfizer社は、通常、開発には数年かかるとされていた感染症ワクチンの領域において、わずか1年以内にmRNAワクチンを実用化し供給することができた。製薬の開発で最も時間を要するのは治験(臨床試験)であるが、同社は被験者データの収集・分析において、データサイエンティストがデータセットを調べて不整合をチェックする工程を、「スマートデータクエリ(SDQ)」と呼ばれる機械学習ツールで自動化した。これにより、わずか22時間で治験データを分析可能な状態にできるようになったのである。さらに、Pfizer社は、2021年3月から仮想薬品デザインテクノロジ会社である仏Iktos社と提携し、医薬品設計をクラウド上のシステムで行っている。

ITR 著作物の引用について

ITRでは著作物の利用に関してガイドラインを設けています。 ITRの著作物を「社外利用」される場合は、一部のコンテンツを除き、事前にITRの利用許諾が必要となります。 コンテンツごとに利用条件や出典の記載方法が異なりますので、詳細および申請については『ITR著作物の引用ポリシー』をご確認ください。

TOP