Apple社のiPhoneが国内で販売されてからほぼ15年が経過した。そして現在、国内企業においても従業員に対するスマートフォンの貸与・支給が当たり前となった。企業は社内に広く浸透しているスマートフォンを、改めて現場主導のDXを推進するためのツールとして活用することを前向きに検討すべきである。
定着したスマートフォンの会社支給
登場からほぼ15年が経過したスマートフォンは、今や私生活はもとより、ビジネスシーンにおいてもなくてはならないデジタル機器として定着した。その定着化に寄与したのが、企業による従業員への積極的な支給や貸与であることは疑うまでもない。
ITRは2022年1月、企業のモバイル活用の実態を把握するためのアンケート調査を実施した。同調査のスクリーニング調査に回答した従業員50人以上の企業の勤務者(有効回答:3,960件)のうち、スマートフォンが「全社的(全従業員の50%以上を対象)に支給・貸与されている」とした割合は、47%とほぼ半数に達した。「特定部門に支給・貸与されている」と合わせれば、その割合は実に80%に上っている(図1)。国内においては、従業員のスマートフォンは「会社(勤務先)が用意するもの」という認識がほぼ定着しているといえる。
出典:ITR『モバイルアプリの業務活用に関する意識調査2022』(2022年1月調査)
ただし、その普及度に比して、活用度はやや心もとないのが実情だ。スマートフォンが「全社的に支給・貸与されている」と回答した人のうち、「全社的に当たり前のように業務で利用されている」と回答した割合は65%、「業務上、なくてはならない必携の機器である」とした割合は53%にとどまった。
スマートフォンは、デバイスそのものの費用に加えて通信費を要するため、企業にとっての金銭的な負担は決して小さくない。また、OSのアップデートやアプリの配布、紛失や盗難に備えるためのデバイス管理など、運用管理にも一定の労力を要する。そうしたコストに見合うだけの効果が得られているかどうか、企業は改めて検証する必要があろう。