企業におけるSDGsへの取り組みは世界的な潮流となっており、多くの国内企業もコーポレート・ステートメントでSDGsへの対応を宣言し、具体的な活動を進めている。本稿では、SDGs目標への取り組みをDXで推進する視点から、各目標におけるデジタル技術やデータ適用機会を探り、活用ポイントを考察する。
重視されるSDGs
現在、国内外の企業においてサステナビリティ経営が重視されており、SDGsへの取り組みは世界的な潮流となっている。サステナビリティ経営とは、環境・社会・経済への配慮により、事業のサステナビリティ(持続可能性)向上を図る経営である。これには、2006年に国連が打ち出した責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)、および2001年に策定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットにおいてSDGsが採択されたという歴史的な背景がある。
2019年8月には、米国財界ロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、それまでの株主資本主義を否定し、「ステークホルダー資本主義」への転換を表明した。そして、2020年末より、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった。こうした環境・情勢の変化からいえるのは、多くの企業がそれまで固持してきた株主利益を優先する価値観の是非が問われているという点だ。社会や環境への配慮は、ポストコロナ時代のステークホルダーの最大の関心事のひとつとなり、企業の使命が本質的にどのようなパーパス(存在意義)に裏打ちされたものであるかが重視される時期に差し掛かっている。企業は、対外的にも本質的にもこのことを意識して、サステナビリティ経営の戦略方針を立案・推進することが求められているといえよう。
一方、2022年はDXも引き続き重要な経営課題となる(ITR Review 2022年1月号『デジタル&サステナブルの時代へ』#R-222011 )。DXとは、企業レベルでデジタルネイティブへ向かう取り組みである。SDGsに直接関係するコンセプトとはいえないが、SDGsで示される「持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」には、デジタル技術やデータを活用することで実現される/すべきものが多く、SDGsにいかに貢献するかという観点からデジタル技術を捉えることは有益である。そこで、本稿では、SDGsの17個のゴールに貢献し得るデジタル技術を特定のターゲットと紐づけて例示し、技術の活用ポイントを考察する。企業は自社の属する産業界や業種・業態に関連するSDGsゴールを特定し、独自の目標設定を行うのが通例だ。その仮説立案や計画化の一助として参考にされたい。