多くの業界では、工場、建設現場、店舗など、現場での業務を抱えている。こうした現場は、これまでネットワーク環境の制約や物理的な作業が多くを占めるといった理由から、デジタル化が行き届いていない傾向にあった。しかし、現場業務の高度化はビジネスに直結するため、デジタル化への期待が大きい分野といえる。
ビジネスの最前線でのデジタル活用
インターネット業界などの一部の業界を除き、ほとんどの業界が何らかの物理的な現場業務を抱えている。製造業の場合は工場や倉庫で、小売業では店舗で、運輸業や建設業では屋外で、それぞれ業務が存在する。こうした現場では、人手による作業が多い、地理的制約がある、PCなどのITツールが持ち込みにくいといった理由から、デジタル化が行き届いていない傾向にあった。しかし、スマートフォンなどのモバイルデバイスの普及、モノのインターネット(IoT)、ドローン、第5世代移動体通信システム(5G)の通信技術などの進展により、デジタル化の適用が急速に進みつつある(図1)。
製造業は、早期からデジタル化の影響を大きく受ける業種になると予想される。なかでも、製造工程や品質の可視化、生産機械や設備の遠隔制御、製品の利用状況の可視化などを目的とした、IoTの活用が有望な分野のひとつだ。製造現場や倉庫・物流分野における人工知能(AI)やロボティクス技術の活用は高度化し、さらに自動化や無人化が進むと考えられる。ロボットアームや機器の遠隔操作、自動運行や無人運転などは、すでに現実のものとなっている。流通業、とりわけ大規模な店舗を多数展開する百貨店、スーパーマーケット、量販店にとって重大な課題は、ネットショッピングに対する優位性の確保となるだろう。そのためには、接客を含む店舗内業務の高度化と、リアル店舗ならではの買い物体験の提供が求められる。また、IoTを活用した顧客動線分析やデジタルサイネージを利用した店頭プロモーションなども注目されている。
医療分野では、遠隔診療やロボティクス手術、医療画像や医療記録のデータ解析なども進展している。建設・土木業界でも、建機の遠隔操作やドローンを活用した測量などが実用化されている。その他、防災・防犯、高齢者見守り、エネルギーマネジメント、交通や物流の最適化など、さまざまな業界において現場業務のデジタル化が進むと考えられる。
出典:ITR