AI技術のビジネス活用を容易にするための手段として自動化された機械学習(AutoML)が注目されている。機械学習に関わるタスクを専門スキルなしで実行できるツールとして極めて有望であるが、一方で、企業は、自動化が進展するからこそ求められる人の役割についても目を向ける必要がある。
注目される機械学習の内製化
AI技術とその主要な構成要素である機械学習は、近年、さまざまな産業でその有効性が実証されており、ビジネス活用の事例も増加している。これを受けて、学習済みのモデルを採用した市販のAIソリューションの利用にとどまらず、自社固有のデータを活用して独自の機械学習モデルを開発し、そこから有用な洞察を得ようとする「内製化」の動きが活発化しつつある。
その背景には、DXの推進によってデジタル化が進展し、豊富なデータの取得が可能になったことに加えて、長引くコロナ禍によってビジネス環境の不確実性が高まったこと、業務のリモート化/自動化に対する要求が高まったことなどがあると考えられる。つまり、先行きの見えにくい環境下にあって、データを活用して日々の意思決定を効果的に行うための手段としてAI技術(機械学習)が位置づけられるようになっているのである。
そうしたなか、自社固有のデータを活用した機械学習を支援するテクノロジとして注目されているのが、機械学習自動化(AutoML)である。機械学習を行ううえで必要となる主要なタスクを自動化することにより、専門スキルを持たない人でも独自の機械学習モデルを設計・構築することができる。データサイエンティストの不足が叫ばれている昨今において、機械学習(ひいてはその技術を活用したAI技術)を積極的に活用したいと考える企業にとっては、極めて魅力的なツールといえる。
市場規模も拡大が見込まれている。ITRでは、機械学習自動化機能を提供する製品・サービスを「機械学習プラットフォーム」と定義して市場調査を行っているが、同市場の国内市場規模は2020年度の約72億円から、5年後の2025年度には約200億円に成長すると予測している(図1)。
出典:ITR『ITR Market View:AI市場2021』