DXへの重要な取り組みのひとつとしてデータドリブン経営の重要性が叫ばれるが、従来のデータ活用とデータドリブン経営の違いが明確に示されることは少ない。また、「データからイノベーションは生まれない」といったデータドリブンへの批判的意見も聞かれる。本稿では、デジタル時代に求められる真のデータドリブン経営とは何かを探る。
DXにおけるデータ活用の重要性
ITRでは、デジタル時代に適合した組織カルチャーの6つの要件のひとつとして「ファクトに基づく意思決定」をあげている(ITR Insight 2020年秋号『デジタル時代の組織カルチャー』#I-320101)。そこでは、意思決定のあり方は組織カルチャーを左右する重要な要素のひとつであり、日々技術が進化し、ビジネスの状況がめまぐるしく変わる時代において、迅速かつ的確な意思決定を行うには客観的なデータを活用することが求められると述べた。SNSの普及、Eコマースやキャッシュレス決済の浸透、モバイルやセンサーデバイスの低廉化、IoTの進展などによって、人の行動やモノの稼働状況などがデジタルデータとして幅広く捕捉できるようになったことから、そうしたデータを業務やビジネスにおけるさまざまな意思決定に活用することは自然の流れであり、有効な打ち手といえる。また、デジタルが浸透する社会では、多様化した人材とオープンでフラットな組織が優位性を発揮する。仮説を素早く検証するアジャイルな意思決定と、ビジネスの最前線となる現場での自律的な行動が求められ、データドリブンであることが、重要な要件となる。Amazon.com社やGoogle社などのデジタルネイティブ企業は、生まれながらにしてデータドリブン経営を実践している。巨大企業となった現在も、ビジョンと目標を全社で共有したうえで、客観的でリアルタイムなデータに基づいて現場が自律的に行動している。