1. TOP
  2. レポート・ライブラリ
  3. AIプロジェクト企画立案の考慮点 - 予測の効果を見極めるAIキャンバス -


ITR Review

コンテンツ番号:
R-221031
発刊日:
2021年3月1日

AIプロジェクト企画立案の考慮点

予測の効果を見極めるAIキャンバス

著者名:
舘野 真人
AIプロジェクト企画立案の考慮点のロゴ画像

今日におけるAI技術の価値は、人間の決断や行動を支える「予測」を低コストで実現できるようになったことにある。したがって、AI技術のビジネス活用を企画する際には、日常業務に関わるタスクを分解し、そのなかで「予測」のインパクトが大きい分野に着目するのが有効である。本稿では、AIによる予測の効果を見極めるためのツールとして「AIキャンバス」を紹介する。

予測マシンとしてのAI活用

経済の不確実性が高まるなかで、AI技術によって業務の改革や効率化を実現したいと考える企業は着実に増加している。とりわけ、コロナ禍によって人間の行動が制限されたことは、業務の無人化・自動化に向けた取り組みを加速させる要因となっている。技術的にも機械学習自動化プラットフォームの台頭により、専門スキルを持たないスタッフでもAIアルゴリズムの開発が可能な環境が整いつつある。

しかしながら、総論としてのAI技術の活用に前向きな企業が増える一方で、実際に技術をどの業務に適用すればよいか、どのような価値を創出するか、その価値をどのように評価すればよいか、といった各論に入ると、そこから先に進めなくなるケースが散見される。これは、多種多様なAIソリューションが乱立し、その全体像が見通しにくくなっていることに加えて、現在のAI技術で効率化できるタスクが限定されていること、継続的な改良・改善を要するため効果を事前に想定しにくいことなど、さまざまな要素が影響していると考えられる。

現時点で、AI技術のビジネス活用を検討する場合は、まずは、AI技術を極力シンプルに捉えるのが望ましい。つまり、「人工知能」という言葉に惑わされずに、AI技術を「データの学習を通じた予測マシン」と捉えるのである。

事実、今日のAI技術によってもたらされるのは、人間の「知能」そのものではない。その一部をつかさどる「予測」の機能である。例えば、近年になって急速に精度が向上している多言語翻訳(ニューラル翻訳)ソリューションは、単語の意味や文法を理解したうえで翻訳を行っているわけではない。プロの翻訳家の仕事ぶりを学習し、彼らならどのように翻訳を行うかを予測することで答えを導いている。また、自動運転車は、交通事情に合わせて人がどのようにハンドルやブレーキを操作するかを学習して精緻に予測することで実用化を目指している。ディープラーニングの登場と学習方法の進化によって、それまで人間が行ってきた行動を予測問題として捉え直したところにこそ、今日のAIブームの本質がある。

このように、AIを「予測マシン」と捉えると、企画立案の道筋が描きやすい。業務のなかで、「どのような予測を行わせるか」を起点に考えればよいからである。

ITR 著作物の引用について

ITRでは著作物の利用に関してガイドラインを設けています。 ITRの著作物を「社外利用」される場合は、一部のコンテンツを除き、事前にITRの利用許諾が必要となります。 コンテンツごとに利用条件や出典の記載方法が異なりますので、詳細および申請については『ITR著作物の引用ポリシー』をご確認ください。

TOP