2020年1月14日のWindows 7のサポート終了で、Microsoft社がサポートするInternet Explorer(以下、IE)はIE11のみとなった。また、その翌15日(米国時間)、同社はIEからの移行を推奨しているMicrosoft Edgeを、Google Chromeと同じレンダリングエンジンに変更した“新しいEdge”をリリースした。本稿では、これによる社内標準Webブラウザの動向の変化について考察する。
国内企業の利用が拡大するChromiumベースのWebブラウザ
2020年1月のWindows 7のサポート終了を機に、多くの企業はWindows 10への移行によるPC運用管理の変更を余儀なくされたことであろう。新しいOSへの移行と同時に検討課題となるのが社内標準Webブラウザの移行である。多くの企業で社内標準Webブラウザとして利用されてきたMicrosoft社のIEのサポートライフサイクルは、利用しているWindowsと同一だった。現在は各バージョンのWindowsにインストール可能な最新版のIEがサポートの対象となっており、現時点ではWindows 8.1および10で稼働するIE11のみである。なお、IE11のサポート期限については、Windows 10 Enterprise LTSCの初期バージョンのサポート期限である2025年10月14日とされている。
ITRでは、2020年7月13日~8月11日の30日間、2019年、2018年の同期間における弊社WebサイトへのPCからのアクセスユーザーのWebブラウザ環境を解析した(図1)。弊社Webサイトへのアクセスは、PCからが8割強を占めている。またビジネスの性質上、企業のIT部門およびITベンダーからのアクセスが大多数を占めていると想定される。そのPCアクセスのWebブラウザ別シェアを見ると、2018年はIEが45%でGoogle Chrome(以下、Chrome)を僅差ながら上回り最多であったが、2019年に同シェアは40%に減少し、1位はChromeとなった。さらに、IEは2020年には20%に半減した一方で、Chromeは5割弱から6割強へと14ポイント上昇し、レガシーWebブラウザからHTML5準拠比率の高いモダンWebブラウザへの移行が加速していることがうかがえる。
Microsoft社はWindows 10のリリース時にIEの後継WebブラウザとしてMicrosoft Edge(以下、Edge)を搭載したが、ActiveXやVBScript、SilverlightなどのHTML5に準拠しない古い技術への対応のため、IE11も搭載することとなった。そして、米国では、これまでの同社製レンダリングエンジンであるEdgeHTMLを利用していたEdgeから、Chromeと同じオープンソースのChromiumベースに切り替えた「新しいMicrosoft Edge」の正式版を提供開始した。日本での新しいEdgeの自動配信は、e-Taxに関わる一部のシステムで問題があったことから確定申告期間以降に延期されていたが、2020年6月より、新しいEdgeに移行するためのWindows 10更新プログラムの配信が開始されている。ITRのWebサイトへのPCアクセス(2020年)の内訳では、10%のEdgeの半数強を新しいEdgeが占める結果となった。これを、Chromeと合わせると、企業利用のブラウザの7割弱がChromiumベースとなる。
出典:ITR