新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて、国内企業の間でも従業員がオフィスに通勤することなく業務を行う手段としてテレワークの普及が進んでいる。だが、非常時における業務の継続を第一の目的としたテレワークにおいては、平常時とは異なる視点での対策が求められる。
テレワーク実施で露呈した課題
新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振るうなか、感染拡大防止を目的に、国内企業においても従業員に対してテレワーク(在宅勤務)を推奨または義務づける動きが急拡大している。近年の経営課題とされてきた働き方改革の推進、今夏に開催が予定されていたオリンピック/パラリンピックへの対応などで環境整備を進めてきた企業も多く、大きな混乱は起こっていないようにも見えるが、実際にテレワークの実施に踏み切った企業の間では、大小さまざまな問題が顕在化している。
図1は、テレワークの推奨を実施している企業のIT担当者から寄せられている代表的な課題をまとめたものである。なかには、こうした課題が解決できないために、会社からテレワークが推奨されていながら従業員が出社を余儀なくされているというケースも少なくない。
出典:ITR
顕在化している課題は、大きく、ITインフラ、業務プロセス、コミュニケーションの3つに集約されるが、その多くは、テレワークの対象者数が当初の想定を大きく上回ったことに起因している。つまり、一部の従業員がテレワークを行ううえでは問題がなくとも、それを全社規模で(あるいは全従業員が)実施するといった、事業継続を目的としたテレワークの準備は十分に整っていない企業が多いことが明らかになった。
COVID-19の感染被害は現在進行形の脅威である。4月7日付けで発出された緊急事態宣言は5月25日に解除されたものの、こうした活動自粛の要請は、今後も断続的に実施される可能性がある。仮に、第2波、第3波といったかたちで感染被害が多発すれば、さらに厳しい都市封鎖(ロックダウン)の実施も視野に入るであろうし、仮に自社のオフィスから感染者が出れば、オフィスビルの一時封鎖も余儀なくされるであろう。テレワークは確かに非常時に業務を行うための有効な手段のひとつだが、制度が用意されてさえいれば、それで業務が回ると考えるのは早計である。万一の事態において実効性のある対策とするためには、「オフィスが使えなくても業務を止めない」ことを最大の目的とした制度やインフラを整備する必要がある。