従来の人材管理システムは、主に大企業が人事評価を中心とした特定の人事業務に利用するケースがほとんどであったが、最近になって利用企業の規模が中堅企業から中小企業まで広がると同時に、従来とは異なる利用分野も登場している。本稿では、人材管理市場の最新動向として、企業規模によるセグメント化と適用業務の拡大の2点について解説する。
企業規模によるセグメント化が顕著に
ITRでは、人材管理システムを以下のように定義して、定期的に市場調査を行っている。
「従業員のスキル情報を一元管理し、組織における人材配置を最適化するシステムである。従業員の生産性向上や、人材活用の最大化を図るための異動シミュレーション機能や必要人材の抽出機能、人事評価・人事考査機能、スキル・キャリアプラン管理機能などから構成される。タレント・マネジメントとも呼ばれている」
最新の調査では、人材管理市場のベンダー別売上金額シェアは図1の結果となった。
出典:ITR「ITR Market View:人事・人材管理市場2019」
これによると、カオナビが1位、あしたのチームが2位となっており、SAP、オラクル、カシオヒューマンシステムズ、インフォテクノスコンサルティングの4社を含む上位6社が、全体のほぼ6割を占めている。
しかし、これら上位6社はそれぞれ強みとする顧客企業の規模が異なっており、従業員規模別でのシェアを見ると、それぞれのセグメントにおいて各社の順位は大きく変動する状況となっている(図2)。
出典:ITR「ITR Market View:人事・人材管理市場2019」
図2によると、全体の市場でシェア1位のカオナビは従業員規模別の市場では100人から1,000人未満の企業に、2位のあしたのチームは100人未満の企業に売上げが集中しており、これらの2社は1,000人以上の大企業では、全体市場での順位ほどの実績は見られない。一方で、他の4社は1,000人以上の大企業に売上げが偏っており、大規模導入を前提としたシステムであることがうかがえる。
以上のように、人材管理は企業規模によって実績のあるベンダーが極端に異なっており、表面的な機能だけで評価することはリスクが高いといえる。人材管理のベンダー選定においては、まず自社の規模で実績の高いベンダーに絞り込むことが重要である。