デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が本格化しようとしている今、企業は、レガシーシステムの根本原因に対する問いかけをすべきではないだろうか。プラットフォームやシステムの老朽化、ブラックボックス化の現状だけでなく、なぜそうした状態に陥り、解消できないでいるかを深堀りすべきである。
レガシーシステムを取り巻く環境
レガシーとは直訳すると遺産であり、狭義にはプラットフォームとしてのメインフレーム、およびメインフレーム上のアプリケーション資産を指す。メインフレームに準ずるプロプライエタリ(独自)なプラットフォームを含むことも通例で、IBM社のAS/400(現Power Systems)や国産オフコンなどが代表的である。こうしたプラットフォームやシステムがレガシーであることを象徴するキーワードに「ブラックスクリーン」「グリーンスクリーン」というのがあるが、黒あるいは緑一色の画面上の文字、記号、コマンドプロンプトなどから成るCUI(キャラクター・ユーザーインタフェース)の俗称である。1990年半ば以降、Webに代表される視覚的なアイコンやメニューをマウスで操作するGUI(グラフィカル・ユーザーインタフェース)が主流になっており、その時流から取り残された負の遺産であるレガシーシステムを、利用者目線で表現したキーワードといえるだろう。
こうしたレガシーシステムからの脱却は、当然ながら日本だけの問題ではない。海外におけるクラウドERPの最新導入事例でも、グリーンスクリーンや膨大なカスタマイズを行った旧システムについて生々しく語られるのは珍しいことではない。また、国内事例に比べて規模が桁違いに大きいのが海外事例の特徴である。事業や拠点数が多いグローバルビジネスおよびその再編やM&Aが頻発するケースでは、システムの刷新がビジネススピードに追いつかず、巨大化・サイロ化・複雑化しやすいことからレガシー化するといった事情もある(ITR Insight 2016年春号「クラウドERPの最新動向」#I-316042)。例えば、ある海外ハイテク企業で保守不能な1万箇所ものカスタマイズがなされたのは、ブラックスクリーンではなく、技術的には最新のクラウドベースのシステムに対してであった。