医療機器、AR/VRメガネ、スマートウォッチといった人体装着デバイスが、人が携帯するスマートフォンのような通信デバイスと通信する際に利用する超近距離通信をBAN(Body Area Network)と呼ぶ。有線形態のBANもあり得るが、実質は無線に限定されていたネットワークと考えてよい。到達距離はおおよそ2m以内と短く有効帯域も狭いが、微小電力で長時間利用できることが特徴である。BANには、IEEE 802.15.6という2012年に制定された国際標準規格が存在する。IEEE 802.15.6よりも、省電力で干渉に強く、通信品質の向上を狙った新しい企画が、Smart BANである。これは、ETSI(欧州電気通信標準化機構)が主導した医療ヘルスケア向け次世代BAN規格で2015年に発行された。近年発売されているスマートフォンの多くに搭載されているNFC(Near Field Communication)も到達距離は数cmであり、BANに分類されることが多い。
PCとキーボード/マウスとの接続といった比較的近い距離で通信を行うネットワークをPAN(Personal Area Network)と分類する。PANに属するテクノロジで、最も代表的なものにBluetoothがある。Bluetoothは1999年にバージョン1.0の規格が公開され、現時点での最新バージョンは5.0である。バージョン4.0でIoTに対応すべく省電力のBLE(Bluetooth Low Energy)モードが追加され、バージョン5.0ではメッシュ型トポロジーを採用することも可能になった。PANに属するテクノロジとしては、他にもZ-Wave、ZigBeeなどがあり、PANより短距離をカバーするBANの領域にも適用されることも多い。
図1.到達距離によるネットワーク分類
出典:ITR
LAN(Local Area Network)については、本稿で解説する必要はないだろう。有線LANとしては、ITではEthernet(本稿では汎用Ethernetと呼ぶ)が世界的な標準となったが、OT(Operational Technology)では産業用Ethernetという汎用Ethernetと異なる仕様(規格により汎用Ethernetと互換性がないものも存在する)や、汎用Ethernetと互換性のないフィールドバスといったテクノロジが利用されていることに留意する必要がある。無線LANにおいては、Wi-Fiが世界標準となった。IoTのために開発されたLPWA(Low Power Wide Area)には自営型が存在し、自営LPWAはLANとして利用することも可能である。
LANと、後述するWANの間にあるのがMAN(Metropolitan Area Network)と呼ぶ。本来、MANは東京駅周辺といった比較的狭い範囲で提供されるネットワーク網のことを指すが、本稿では、WANとLANとつなぐ、アクセス回線に用いるネットワーク(「ラスト・ワンマイル」と呼ばれることも多い)を指す。光ファイバーを使ったMANサービスで代表的なものには、FTTH(Fiber to the Home:NTT東日本/西日本のフレッツ光サービス)、FTTC(Fiber to the Curb)、FTTdp(Fiber to the final distribution point)などがあり、これを総称してFTTxと呼ぶ。この他にも、通信事業者が保有する光ファイバーを企業に貸し出すDark Fiber、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)やvDSL(Very high-bit-rate DSL)などのデジタル加入者線テクノロジがあり、これらはxDSLと総称する。
WAN(Wide Area Network)も本稿において解説は不要だろう。有線WANでは、日本でIP-VPNと称されるMPLS(Multi-Protocol Label Switching)や広域LANが有名である。無線WANには、3.5G、3.9G(LTE)、4Gや2019年からの商用利用が期待される5Gなどがある。
WANの到達距離は長いが地球全体をカバーすることはできない。地球全体をカバーするネットワークをGAN(Global Area Network)と分類する。以前より商用利用されているVSATやInmarsatが代表的なサービスであるが、高価かつ狭帯域であり、インターネットにネイティブで対応していないため、利用企業は限定的であった。近年は、比較的低高度に大量の衛星を打ち上げ、広帯域と低コストを両立させてインターネットを提供するGANサービスに注目が集まっている。2019年にサービス開始を予定しているOneWeb社、2019年より数千台の衛星を打ち上げる予定のSpaceX社などが有名である。