レガシーシステムが足かせとなって維持費用がかさみ、デジタル化やイノベーションに向けた新規投資に配分できないといった悩みを抱える企業が多い。しかし、レガシーシステムを刷新しさえすればデジタル変革が起こせるかのような、短絡的な論調には注意が必要である。企業は、正しい方向性を見失うことなく、レガシーシステムのコストを削減していくべきである。
デジタルトランスフォーメーションを阻害するレガシーシステムの課題
2018年9月7日、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」は、中間のとりまとめとして「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」と題する資料を公開した。サブタイトルにある「2025年の崖」とは、レガシー化したシステムの刷新が滞り、このまま課題が先送りされていくと、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性を指す。そして、このような扇情的なキーワードを命名するに至った背景として、約8割の企業が老朽化したシステムを抱えている課題を指摘している(図1)。
出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「デジタル化の進展に対する意識調査」(平成29年度)を基にITRが作成
図1は、JUAS(一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会)と野村総合研究所が共同で2016年12月から2017年1月にかけて実施した「デジタル化の進展に対する意識調査」を基に作成されたものである。この調査では、レガシーシステムを「技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化などの問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっているシステム」と定義したうえで、JUAS会員企業のCIO、IT部門長、管理職、および情報システム子会社の社長、役員、管理職208名から回答を得ている。