デジタルイノベーションの重要性が叫ばれる昨今だが、国内企業においてその道筋が描けている企業はまだ少数である。本稿では、ITRがビジネス部門、IT部門それぞれに対して行った直近の調査結果を紐解き、現場レベルの業務課題に焦点を当てて、企業において潜在的に求められているデジタルイノベーションのシナリオを考察する。
デジタルイノベーションに半信半疑のビジネス部門
デジタル技術を活用したビジネスや業務の変革(すなわちデジタルイノベーション)の重要性が指摘されるようになって久しいが、このテーマを全社レベルで推進するうえでは、現場のビジネス部門の参画が不可欠となる。では、当のビジネス部門は、このデジタルイノベーションに対してどのような認識をもっているのであろうか。ITRが直近に実施した調査結果によれば、その重要性は認識しているものの、具体的な効果についてはイメージできていない、という微妙な立ち位置にある担当者が多い。
ITRが2017年11月に、企業の非IT部門に所属する個人(有効回答:665件)に対して実施したデジタルイノベーションに関するアンケート調査によれば、「ITやデジタル技術を活用した業務やビジネスの変革」について、「重要」と認識している回答者の割合は8割以上に達したものの、「全社レベルで取り組むべき最重要事項」とした割合は10%強にとどまった(図1)。一方で「重要だが、自社においては効果が限定的だと思う」とした割合が30%を上回っており、デジタル技術を否定こそしないまでもその効果に懐疑的な人が多いことが明らかとなった。
喫緊にビジネスモデルの転換が迫られているような企業であればともかく、変革の推進はいかなる組織にとっても困難を伴うものである。本業がある程度軌道に乗っている最中の企業であればなおのことである。デジタルイノベーションの意義を大上段から振りかざすだけで、ビジネス部門から十分な信頼を得ることは難しい。デジタルイノベーションを推進するうえでは、現場で日々生じている課題を理解し、それに施策が課題解決につながるという明確なストーリーを提示することも必要である。
出典:ITR(2017年11月調査)