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ITR Review

コンテンツ番号:
R-218053
発刊日:
2018年5月1日

デジタル化に向けたIT部門の役割の再定義

業務ポートフォリオによる航海図の策定

著者名:
内山 悟志
デジタル化に向けたIT部門の役割の再定義のロゴ画像

IT部門に求める役割見直しの機運

これまでも、リーマンショック後のコスト削減の嵐、内部統制への傾注といったビジネス環境の変化に直面した時、また、オープンシステムの浸透、ERPの台頭、クラウドの普及といったテクノロジの転換期には、IT部門のあり方を問う議論が必ず持ち上がってきた。今まさに、こうした議論が再燃しているのはデジタライゼーションの潮流によって、本業分野におけるビジネス変革やビジネスモデルの転換にIT部門がどのように貢献できるかが問われていることが背景にある。

ITRが17年間継続して行っている「IT投資動向調査」では国内ユーザー企業のITに対する取り組みを定点観測的に追跡しているが、最新の調査では現在と今後のIT部門の役割に関する質問を投げかけている。まず、自社のIT部門が「現在担っている役割」と、「3~5年後に担うべき役割」をそれぞれ問うた結果を集計してみると、全体的に担うべき役割が縮小・分散する傾向が見られた(図1)。

これは、既存システムの維持運用に加えて、グループやグローバルへの業務領域の拡大、セキュリティ対策やコンプライアンスへの対応、数多い開発・保守案件の遂行など実施しなければならない業務は増加する傾向にあるものの、人材は必ずしも増員されるわけではなく、抱えている業務で手一杯という状況から何とか脱したいという意向を読み取ることができる。

特に、現在IT部門が担っている中心的な役割である「システムの機能やパフォーマンスの改善」「システムの安定稼働/障害対応」「セキュリティ管理」といった「従来型機能」に位置づけられる項目は、調査時点では6割程度の企業でIT部門が担っているが、3~5年後にもIT部門が担うべきだと考えている企業の割合は3~4割と大きく落ち込んでいる。

ITをビジネスに利用する以上、安定性や安全性、パフォーマンスに関わる要求水準が今後低下するとは考えにくいため、その役割自体の重要度は下がらないだろう。したがって、こうした「従来型機能」は中長期的にはクラウドの活用、専門性に優れた外部事業者へのアウトソーシング、システムによる自動化などを推進していくことで社内の業務負荷を軽減したいという意向が反映されていると考えられる。

図1.IT部門の役割(現在/今後)

図1.IT部門の役割(現在/今後)
出典:ITR「IT投資動向調査2018」

一方、今後に向けて拡大が見込まれるのは「ビジネス・イノベーションの促進」「新規市場参入のための戦略・技術の検討」「商品・サービスのデジタル化」など「ビジネス戦略」に関わる役割である。現状では、これらの役割をIT部門が担っている企業は軒並み十数パーセント程度にとどまっているが、将来に担うべき役割と位置づける企業の割合はいずれもわずかながら上昇している。一部とはいえ、攻めの組織に転じたいと考えるIT部門の責任者が存在することを物語っている。

本来であれば、「従来型業務」の省力化を図り、そこで創出された余力(時間)を業務改革やビジネス戦略に直結する業務に振り向けることが期待されるが、「IT改革」および「業務改革」に分類される項目も、現在と今後の選択率はほぼ横ばいであり、役割が拡大すると期待されている「ビジネス戦略」に関わる項目も、「従来型機能」の減少分を埋め合わせるほどではない。

実はこうした状況は同じ質問を投げかけた3年前とほとんど変わっていない(ITR Review 2015年1月号「攻めの姿勢が問われるIT部門」 #R-215011)。つまり、IT部門では従来型機能の業務をスリム化し、ビジネス戦略に貢献する業務を拡大させたいという気持ちは持っているものの、その転換は遅々として進んでいない状況が見て取れる。

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