IoT、ビッグデータ、AIといった技術革新に続き、ブロックチェーンが注目されている。その背景には、ブロックチェーンが暗号通貨取引の基盤技術から、分散台帳のプラットフォームへと進化し、金融以外の産業や業務分野でも活用が検討されるようになったことがある。特に、サプライチェーン分野のイノベーションで検討が進められていることに、企業は注目すべきである。
ブロックチェーン技術の変遷
ブロックチェーンは、初期にはビットコインに代表される暗号通貨の取引を実現するための基盤として注目されてきた。暗号通貨は、その後、イーサリアム、リップルなど第二世代の登場を契機として、乱立ともいえるほど多数が流通するようになっており、暴落や取引所の閉鎖といった社会的現象も引き起こっている。一方で、ブロックチェーンは、顧客の利便性向上、低コスト化、収益拡大を図るためのFinTechの基盤技術としても研究が進められてきた。ITRでは、デジタル化の潮流を4つの領域に分類し、デジタルビジネス・フレームワークとして提示しているが(ITR Review 2017年2月号「業種別にみるデジタルビジネス戦略」 #R-217022)、既存ビジネスをデジタル技術で変革するビジネスITの領域でブロックチェーンを活用するのは、これまでは金融業が中心であった。スマートコントラクトなど、取引や契約そのものをデジタル化する取り組みも、金融業界が中心となって先導してきたのは確かである。
しかし、昨今では、ピアツーピアネットワークにより情報を安全に記録・検証し、ネットワークに参加する全ての参加者が情報を共有できるブロックチェーン(分散台帳)技術が、金融業界のみならず幅広い産業で注目されるようになってきている。例えば、官公庁や社会的基盤を支えるエネルギー産業、高い倫理とセキュリティが求められる医療/ヘルスケア分野、そしてサプライチェーン分野でも実用化研究が進められている。ブロックチェーンは、暗号通貨の基盤技術から、分散台帳のプラットフォームとして、むしろ本来の可能性を追求する時代になりつつあるといえるだろう(図1)。
出典:ITR