SD-WANは単なるSDNのWAN版ではない。SD-WANは特定のテクノロジを指すものではなく、企業ネットワークの課題解決のための重要トレンドである。現時点では事業者/ベンダーにより提供機能や採用テクノロジが異なるが、自社ビジネスの俊敏な展開やネットワーク運用管理コストの低減に有効なソリューションとしての価値をよく理解したうえで検討を開始すべきである。
企業ネットワークにおける課題
国内企業のIT部門において、自社ネットワークの構築と運用は長年重要な業務のひとつとなっている。国内では一般的に「IP-VPN」と総称される企業向けMPLS(Multi-Protocol Label Switching)、広域イーサネット、専用線、ブロードバンド回線など、多種多様なネットワーク回線やサービスを利用することが可能な日本は世界でも希有な環境にあり、その豊富な選択肢を駆使して、国内企業のIT部門は適切なコストで堅牢かつ高パフォーマンスのネットワークを構築/運用してきた。
図1に大企業におけるネットワーク構成の典型例を示す。新しい回線/サービスが提供開始された後やネットワーク回線/サービスの契約期間終了前に、コストパフォーマンスに優れている回線/サービスを選択し、それらを相互接続して運用していることが非常に多い。しかしながら、オフィスLAN、データセンターLAN、国内WAN、海外WAN、モバイルWAN、リモートアクセス、インターネット接続など、各々異なるアーキテクチャとポリシーを持つネットワークが併存し、企業ネットワーク全体としての統合運用管理が困難な状況に陥っている。
次に年間売上金額1,000億円以上の大企業に対し、自社ネットワークの運用管理における課題をたずねた結果を図2に示す。「利用者・ID管理が煩雑になっている」「構成管理が大変である」「オフィス・フロア内のレイアウト変更が頻繁にある」と回答した企業が多いことがわかる。つまり、ユーザー管理、ネットワーク構成管理、変更対応が主な課題となっている。このような状況に陥っている根本原因は、企業ネットワーク全体に対するアーキテクチャおよびポリシーがなく、場当たり的なネットワーク事業者/回線/サービスの選定を行っていることにあると考えられる。
出典:ITR
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