RPA製品・サービスに注目が集まっているが、導入アプローチの体系化や整備が後追いになっていることが懸念される。また、自動化による生産性向上とガバナンスを両立できる枠組みの検討も不十分ではないかと見られる。企業は、主体的にRPAの対象となるアクティビティを導出していくべきであり、ベンダーに丸投げすることは避けるべきである。
RPAへの期待の高まりと見えてきた課題
中長期的な人口減少や少子化など社会環境の変化や、産業デジタル化のイノベーションの高まりを受けて、ロボットによる自動化や省力化への取り組みが注目されるようになってきている。国内労働人口が中長期的に減少していく一方で、長時間労働に対する規制が今後も強化されていくなか、企業は、「従来手法では難しかった人の作業の代替」「システム化の効果が出にくかった業務への適用」「既存システムを修正・改変することなく導入が可能」といった効果への期待から、RPA(Robotic Process Automation)に対する投資意欲を高めている(ITR Review 2017年9月号「RPA導入の留意点」 #R-217092)。昨今、ITRでもRPA製品・サービスの機能比較、他社導入事例、費用対効果などに関する問い合わせを数多く受けるようになってきていることも、こうした背景から読み解くことができる。
RPAが、従来から企業が実施してきたシステム化による業務効率向上や、物理ロボット導入による生産性向上施策の延長線上で検討できることも、急速に注目を集めている理由であろう。ただし、これまでの施策と異なるのは、RPAの対象となるのが、特定の業務処理やユーザー・インタフェース(プレゼンテーション層)の表層における担当者レベルの業務処理(アクティビティ)に焦点が当てられていることである。言い換えれば、RPAは、これまで避けるべきとされてきた個別の業務処理やアクティビティの最適化や、部分最適を指向する技術であるといってもよいだろう。むしろ、RPA導入にあたっては、こうした特性を踏まえて、机上レベルの議論や検討に時間をかけるよりも、試行や実証ベースで段階的に導入を進めていくべきであるといった主張が主流となっているようである。その反面、RPAを宣伝するベンダーやコンサルティング会社も、どのようにRPAの構想を策定していくべきかの骨格や枠組みについては、あまり重視していないかに見える。