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ITR Review

コンテンツ番号:
R-216092
発刊日:
2016年9月1日

超上流工程の再考

デジタル時代に適応する超上流工程の必要性

著者名:
甲元 宏明
超上流工程の再考のロゴ画像

デジタルイノベーションに対する期待が高まっているが、ユーザー部門や経営者がビジネスモデルやビジネスプロセスを明確化できない場合も多い。このような場合、超上流工程が極めて重要となるが、これまで多くのIT部門で見られた「ビジネス要件定義はユーザー部門/経営者の役割」という考え方を改める必要がある。

従来の超上流工程に対する考え方の限界

かつて企業システムはビジネスプロセスを下支えするものであり、業務遂行の省力化や精度向上のために使われていた。しかし、サプライチェーン・マネジメントや在庫最適化や商品価格最適化のような、人的作業では対応が困難な処理を、高度なアルゴリズムと超高速計算を駆使したシステムで対応することが可能になり、企業システムは人が考えたビジネスプロセスの支援だけではなく、人智を超えたコンピュータならではの高度な処理が期待されるようになった。ここ数年は、デジタルビジネスやデジタルイノベーションといった単語がメディアなどで散見されるようになり、UberやAirbnbのようなITシステムがなければ成立しないような革新的なビジネスに挑戦する企業が増えている。

ビジネスとITシステムの関係はいまや主従の関係ではなくなったにもかかわらず、システム化のためにはビジネスプロセスやルールをまず定義すべきであるという論調がいまでも主流となっている。例えば、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2013年に発行した「超上流工程の検討精度の向上に関する調査報告書」の冒頭には、大きな文字で「システムによって何を実現したいのかは、ユーザーにしか決められない」と記載されている。もちろん、ユーザーを無視してIT部門がビジネスプロセスを設計するのは愚の骨頂である。しかし、ユーザー自身もどのようなビジネスプロセスが良いのか判断に苦しむケースが多いのも事実である。これは特に最近に限った話ではなく、昔から存在する問題である。例えば、冒頭に紹介した在庫最適化については、どのような判断基準(アルゴリズム)が最適なのか、いつどのような判断で在庫補充指示をかければよいのか、などのビジネスプロセスの根幹に関わる部分に関して、業務部門のリーダーや現場担当者が解をもっていないことが多い。それは業務部門の能力が低いのではなく、現実は複雑すぎてやってみないとわからない部分が多いためである。また、顧客要望や外部環境も始終変化しており、IT部門からのビジネスプロセス仕様決定要求に対して、明確に回答できないケースも多い。

図1.超上流工程と役割分担の例

図1.超上流工程と役割分担の例
出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

IPAでは、要件定義を行う前のシステム化の方向性およびシステム化計画を作成する必要があり、これらの工程をまとめて「超上流工程」と呼んでいる(図1)。そして、IPAでは「事業要件定義」と「業務要件定義」は経営層と業務部門(ユーザー部門)の役割であると述べている。しかし、経理処理や給与計算など、ビジネスプロセスやルールが明確に決まっているものについては「事業要件」および「業務要件」を定義するのは容易だが、先に述べたようにビジネスの最前線においては、ユーザー部門でも「事業要件」や「業務要件」が不明確または決められないことが往々にして存在する。

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