Microsoft社が送り出したWindows 10 Mobileは、PCを含めたマルチデバイス環境の統一性が大幅に向上しており、企業からの注目度も高い。だが、その価値を最大限に享受するためには、利用者側に「モバイルファースト」への本格的な転換が求められる。
成熟化するモバイル市場で存在感増すWindows
国内企業において、モバイル・コンピューティングに対する投資意欲は依然として高い。ITRが実施したIT投資動向調査でも、スマートフォンとタブレットは、全100項目に及ぶテクノロジ分野中、投資増減指数で上位2項目を占めた。ただし、会社支給によるスマートフォン、タブレットそれぞれの導入状況を経年で比較してみると、スマートデバイスの導入を新規で計画する企業の割合は減少傾向を辿っており、その市場は成熟期に入っていることが読み取れる(図1)。
出典:ITR「IT投資動向調査2016」
これまでの新規導入から追加導入やリプレースへと需要が変化し、かつ、会社支給型での活用が主流である国内のエンタープライズ・モバイル市場の動向を鑑みれば、“モバイルWindows”への潜在的な期待はかなり大きいと考えられる。Windows PCが支配的である業務環境において、既存環境と親和性の高いモバイル環境は、エンドユーザー、管理者ともに待ちわびたものであるからだ。 そうしたなかで登場したWindowsシリーズは、PC、タブレット、スマートフォンといったマルチデバイス環境での操作性の統一やアプリケーションの互換性が大幅に向上した。すでにWindows 8において、PC/タブレット間の互換性はそれなりに実現されていたが、Windows 10ではこれにスマートフォンや組み込みデバイスも加わる。エンドポイントの統一性を重視する企業にとっては、魅力的なプラットフォームと言えるであろう。
事実、Windows 10リリース前の2015年2月の時点で、スマートデバイス導入済み企業のIT担当者を対象に実施したアンケート調査においても、次期デバイスでサポート予定のOSとして、Windowsをあげる割合は増加傾向を示していた(図2)。今後は、Apple社のiOS、Google社のAndroid OSと並び、少なくとも企業用途ではモバイルOSとしてのWindowsが現実的な選択肢として浮上すると考えられる。
出典:ITR(2015年2月調査)