ITRでは、国内ERP市場の調査を毎年行っており、最新版である「ITR Market View:ERP市場2016」を発刊した。本稿では2010年以降の市場状況を振り返るとともに、最新の調査結果から全般の動向と注目すべき個別分野の動向について速報する。
これまでの国内ERP市場の成長性
ITRでは、2015年末から2016年2月にかけて、「ITR Market View:ERP市場2016」の調査を実施した。国内ERP市場の調査は、2007年度から継続して毎年実施しており、最新の調査結果について述べる前に、直近5年間の市場概況を確認してみよう(図1)。
出典:ITR
2007年度の調査開始から、前年の売上実績を下回ったのは、2008年度の3.0%減と2009年度の6.2%減の2回のみである。リーマンショックに端を発する世界的な経済不況に伴うIT投資減速の影響によるマイナス成長であった。2010年度以降は、調査年により波があるものの、ERP市場全体としては、売上金額が前年から増える傾向を維持している。「ITR Market View」では、売上金額などの数字は新規ライセンス(サービス利用料を含む)のみを対象としており、保守料、導入費用、ハードウェア費用などを含めていない。新規のライセンス売上げのみを対象としているので、市場におけるベンダー製品/サービスの純増が把握できる。導入が一巡し、成熟したといわれる国内ERP市場であるが、ERPパッケージを新規に導入する企業や、導入済みERPパッケージのユーザー数や適用範囲を拡大する企業のニーズはまだあることが確認できる。
ただし、2013年度の伸びは非常に低く、過去5年間で最も低い水準に留まった。ERPパッケージの代名詞ともいえるSAP社の売上低迷が響いた結果である。この影響を考慮して、「ITR Market View:ERP市場2015」では、2014年度も前期比3.6%増と低い伸びが続くことを予測していた。