ワークスタイル変革の重点テーマとして、現在、多くの企業でテレワーク環境の整備が構想されている。しかし、働く場所の自由度を高めるという取り組みの中で見過ごされがちなのが、「オフィス内での機動性の向上」である。自席から一歩離れた場所での生産性を高めることは、変革の第一歩となる。
意外に多い「オフィス内+自席以外」での業務時間
ワークスタイル変革において、働く「時間」と「場所」の制約を取り除くことは、主要テーマのひとつである。特に「場所」の自由度を高めることは、ワークライフ・バランスの実現、顧客との接触機会の増加、災害発生時などにおける業務継続の確保などさまざまな面から効果が大きいとされる。
そのための代表的な施策がテレワークである。現時点で本格的にテレワーク制度を採用・運用している企業は一部にとどまっているが、その検討を開始する企業は少なくない。また、ITRが最近実施したテレワーカーに対する調査によれば、実践者のレベルではすでに効果を十分に実感していることも確認されている(ITR Review 2015年11月号「ITR User View:テレワーカー実態調査」 #R-21511U)。総務省を中心とした政府の後押しもあり、今後、テレワークの採用企業は増加すると見られる。
一般に、テレワークを行う場所として想定されるのは、自宅やカフェなどの公共スペース、あるいは組織が独自に用意するサテライトオフィスなど、「オフィスの外」であるケースが多い。では、「オフィス内」はどうであろうか。フリーアドレスなど特別な制度を取り入れている企業であればともかく、多くの企業では、自席から一歩離れた場所の生産性向上については、あまり考慮されていないというのが実情ではなかろうか。「Tele(離れた場所で)+Work(働く)」という語源に忠実に従えば、上述したような「自席以外のオフィス内でICTを活用して仕事ができること」もまた、広義のテレワークと捉えるべきである。
ITRが2015年10月、従業員数300人以上の国内企業に所属し、日常業務でコンピュータを使用している個人3,000人強を対象に実施した調査によれば、日常的に業務を行う場所として、「オフィス内(自席以外)」をあげた人の割合は実に全体の62.5%に上った(図1)。自席ほどではないが、オフィス外や自宅に比べればはるかに多くの業務時間が割かれていることがわかる。組織全体としてワークスタイル変革に取り組むうえでは、オフィス外だけでなく、オフィス内も視野に入れたテレワーク環境の整備が不可欠である。
出典:ITR(2015年10月調査)