IT部門の活動は経営者やユーザー部門にとってわかりにくいという声がよく聞かれる。国内企業のIT部門において、これまで社内マーケティング活動が十分に行われてこなかったことがその要因の1つといえる。IT部門の活動に関する社内外への説明責任と啓発に向けて「IT白書」の作成が推奨される。
IT部門からの情報発信の必要性
これまでもITRでは、多くの国内企業のIT部門には、2つの機能が不足していることを指摘してきた(ITR Insight 2005年夏号「ITガバナンス確立に向けた管理体系」#I-305071)。それは自己評価機能とマーケティング機能である。自己評価機能は、IT部門の活動やコスト、情報システムの活用状況、ビジネスへの貢献度などを自ら定期的に評価することを意味する。もう1つのマーケティング機能には、インバウンドとアウトバウンドのマーケティングが含まれる。インバウンドのマーケティングは、情報収集を意味し、ユーザーのニーズや課題、満足度などを把握する取り組みを指す。一方、アウトバウンドのマーケティングは情報発信を意味し、技術シーズを啓発したり、自部門の活動成果を公表したりする取り組みが含まれる。自己評価機能によって評価したIT部門の活動成果について説明することもステークホルダーへの情報開示という意味で重要なアウトバウンドのマーケティング・コミュニケーションといえる。これまでITは専門的な知識が必要な領域であったため、経営者やユーザー部門にとってわかりにくいものであっても、仕方ないことだと思われがちであった。しかし、デジタル化が進み、ITがビジネスの最前線で活用される昨今においては、わかりにくいものでは済まされなくなっており、IT部門からの能動的な情報発信が必要となっている。