平成27年7月8日、スルガ銀行株式会社(以下、スルガ銀行)が日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)に対して提起していた損害賠償請求訴訟に関する最高裁判所の判決が下された。平成20年にスルガ銀行が日本IBMに訴訟を提起してから約7年間、プロジェクト推進のあり方が議論されてきたことになる。本稿では本判決を契約不履行の観点から考察し、プロジェクト推進に関する提言を行う。
損害賠償請求訴訟の概要
平成12年、スルガ銀行が日本IBMに次期情報システムの提案を依頼し、平成16年に総額95億円で業務委託契約が締結され、同時に平成20年のサービスインに向けて開発プロジェクトがスタートした。契約締結に約4年を要したことからシステム開発の難易度が高いことがうかがえる。平成19年、当初導入を予定していた基幹パッケージソフトの変更提案を日本IBMからスルガ銀行へ行い、プロジェクトが頓挫する事態に陥った。両社は損害賠償の協議を実施するが進展せず、平成20年にスルガ銀行が日本IBMに対し、開発プロジェクトの失敗により生じた損害及び逸失利益(合計115億8,000万円)の損害賠償を求めて東京地方裁判所に訴訟を提起した。
提訴から4年後の平成24年、東京地方裁判所は日本IBMに対し約74億円の損害賠償金と遅延損害金の支払いを命じる判決を下した。日本IBMは控訴し、平成25年9月26日東京高等裁判所は第一審判決を変更し、日本IBMに対し約41億円の遅延損害金の支払いを命じる判決を言い渡した。第一審と比べて約33億円の減額があった。その後最高裁判所まで上訴がなされたが棄却され、平成25年9月26日時点の判決が確定した。なおスルガ銀行は、開発プロジェクト中止による逸失利益分も損害賠償請求していたが認定されなかった。