2015年5月26日、企業の戦略的IT利活用の促進に向けた取り組みの一環として経済産業省と東京証券取引所が共同で「攻めのIT経営銘柄」を公表した。本稿では公表結果が株価にどの程度影響があったかを調査し、「攻めのIT経営銘柄」を企業はどのように据えればよいかを考察のうえ、今後「攻めのIT経営銘柄」を目指す意味を確かめることにする。
「攻めのIT経営銘柄」とは
アベノミクスの三本目の矢である成長戦略(「日本再興戦略」 改訂2014)において、一番目の施策が日本の「稼ぐ力」を取り戻すことだ。日本企業の生産性は欧米企業に比して低く、情報化による経営革新を進めることで、グローバル・スタンダードの収益水準・生産性を達成していくことが重要だと謳われている。
日本経済再生本部の下部組織である「産業競争力会議」の中で、この成長戦略の具体化が進められ、「守り」から「攻め」へのIT投資の「質」の転換が重要であると位置づけ、「攻めのIT経営銘柄」が創設された。この「攻めのIT経営銘柄」は、投資家から評価を受ける枠組みとして機能し、IT投資の重要性に関する経営者の意識変革を促す目的がある。優れたIT経営を行っている上場会社を選定し公表することで、企業による「攻めのIT経営」の取り組みを促進させる狙いがある。業種ごとに各企業の目標となる企業モデルを「銘柄」として示すことにより、同業他社に波及効果が出ることも期待されている。つまり、株式市場を通じた日本企業の生産性向上策のひとつが、「攻めのIT経営銘柄」だといえる。
今回、経済産業省と東京証券取引所が共同で、東京証券取引所に上場する全ての企業に対して攻めのIT経営に関するアンケートを実施し、財務状況によるスクリーニングと5つの視点(攻めのITに関する経営計画上の位置づけ、社内体制、実施状況、効果及び事後評価、基盤的取り組み)の評価を行い、最終的に18社を「攻めのIT経営銘柄」として選定し公表した。