企業に採用される技術の栄枯趨勢を読み取って、技術提携や人材育成の計画に反映することは、今日のITベンダーにとって重要課題に他ならない。とりわけ現在は、デジタル・イノベーションの普及とともに技術ユーザーの裾野が広がる傾向にあり、技術の将来動向が事業収益に大きく影響する。企業は、技術投資に対する姿勢を鑑みて、ベンダーの事業健全性を確認することが望まれる。
技術評価のプロセス
ITベンダーの推奨技術が、長期にわたり標準的なものか、一過性のものかは企業ITの技術標準化に影響を及ぼす。そのため、企業は、付き合いの深いITベンダーがどのように技術を評価し投資しているかを知っておきたい。大手・中堅クラスのITベンダーでは、通常、何らかの技術評価フレームワークを備え、技術ポートフォリオの変更計画を立案するためのプロセスを有している。最終的な判断は、討議によりなされるが、仮説を立てるための素材として、あるいは計画の妥当性を裏付けるための根拠として、市場規模動向、需要動向、ポジショニング・マップといった、外部リサーチによる客観的な情報が引用される。それらの外部から得られた情報に、自社事業の強み/弱み、顧客から寄せられる意見、競合他社動向といった情報を加味して、技術採用の可否を検討することとなる。
技術リサーチのソースには、IT系のリサーチ会社、コンサルティング会社、シンクタンクなどがある。主な評価軸は以下のようなものである。
<技術評価軸の例>
- 市場規模推移(IT製品/サービスの市場規模)
- 需要動向(技術採用率、将来動向)
- 技術成熟度(導入期、成長期、成熟期、衰退期)
- 標準化動向(仕様、規格など)
- その他(ビジネス価値、トレンド周期の長さなど)
これらのデータを取得して適切に統合することができれば、技術評価のブループリントを描くのに役立つだろう。しかし、リサーチ会社により技術の粒度や定義が異なり、情報を俯瞰的に見て整理することは容易でない。また、技術の細分化が進み、新技術の台頭も著しい現在、あらゆる技術分野を網羅しようとすれば、リサーチにかかるコストは膨大なものとなろう。そもそも「将来予測」というものは不確実性がその前提にあり、データに基づいてさえいれば投資判断は万全と保証できるものではない。そのため、リサーチに一定額を投じることをよしとしない経営幹部も少なくない。こうしたことから、ITベンダーにおいては、より経済合理性が高く、簡便に扱える技術リサーチへの期待が寄せられている。